その23 サケ、ふるさとの川に帰る ― 続く命のバトン ―(平成28年10月1日 )

更新日:2019年07月22日

南相馬市のキャラクター郷くんとノマくんのイラスト

 秋になりましたね。澄んだ空気、青くて高い空。野山や海、川からの自然の恵みに感謝する季節ですね。ここ南相馬では、2011年の原発事故以降、残念ながら自然からの恵みを受けることが少なくなってしまいました。それでも、今年も南相馬の川に、サケが帰ってきました。

 サケはサケ目サケ科の魚で、秋に自分の生まれた川に帰ってくることが知られています。生まれた川に戻ることが出来る理由はいろいろ考えられていますが、実は正確な事がまだわかっていません。しかし、「川のにおいを嗅ぎ分けている」という調査報告があり、このことは、生まれた川に戻ってくる生態に大きく関係のある事が解明されてきました。
 日本におけるサケの遡上河川は、太平洋側では利根川以北の河川、日本海側では九州北部以北の河川で、産卵のために遡上します。多くの個体は、北洋で3回冬を越してから生まれた川に向かい、この頃の全長は、60~80センチメートルほどです。産卵は秋から初冬に行われ、翌年の春には全長5戦地前後のサケの子が、いっせいに川を下り、北洋へと旅立ちます。

 震災のあった年の3月、市内の河川下流部の川底では、孵化したサケの子たちが川を遡る津波の激流に耐えていたのでしょうか。それとも、引いていく波とともに、海に向かっていったのでしょうか。人工ふ化場にいた個体のなかにも、海に向かったサケの子がいたかもしれません。いずれにしても、南相馬産サケの命のサイクルは巡り、今年も南相馬の川にサケが帰ってきたのです。

 震災前、人工ふ化事業のために、市内の川で捕獲されていたサケの親魚の数は、真野川や新田川では約4000~13000尾、小高川では約1100~3300尾でした。捕獲されたサケは、販売もされ、秋の味覚として人々の食卓にのぼりました。また、サケ漁に関連する神社があったり、サケに関する伝説も残るなど、古より、サケは南相馬の人々の生活と共にあったのです。

 震災から5年以上が過ぎました。今年も、南相馬の川に戻ってきたサケは、最後の力を振り絞って産卵し、新しい生命に未来を託し、その一生を終えることでしょう。その姿は、この時代を生きる私たちに、「生きろ」と語りかけているようです。ふるさとの生物とその生息環境は南相馬市の財産ですね。大切に見守りながら、サケと共に生きる文化の再生を強く願いましょう。未来に、南相馬の宝物を伝えていくために。

南相馬の川に戻ってきた産卵後のサケの写真
各地方の名産食材のイラストが示された日本地図のイラスト
南相馬市のキャラクター郷くんとノマくんのイラスト
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