夫Iターン、妻Uターンでゼロからスタート 南相馬生まれの子どもたち中心に暮らしをつくる

公園で子どもと遊ぶ木村さん

夫Iターン、妻Uターンでゼロからスタート 南相馬生まれの子どもたち中心に暮らしをつくる

 

木村 元気  さん(38)

きむら・もとき

 

木村 心 さん(36)

きむら・のぞみ

 

2013年7月〜 南相馬市原町区在住

 

元気さん:石川県加賀市生まれ

(18歳):大学進学を機に東京へ → (31歳):南相馬市へ

 

心さん:南相馬市原町区生まれ

(22歳):就職のために東京へ → (28歳):南相馬市へ

 

有限会社 三品電設社員


 

東日本大震災をひとつのきっかけにして、妻・心さんの故郷である南相馬に住まいを移した木村さん夫婦。夫・元気さんは、妻が苦境にあった家業を手伝いたい気持ちを汲んで、初めての土地、初めての仕事に飛び込みました。「頼まれたからじゃなく、自分が来たかったから」その想いを胸に始まった南相馬での生活は、子ども3人も加わって8年目を迎えました。

移住のきっかけについて話す木村夫妻

「しょうがなく」じゃなくて、前向きな心構えで。 いちから暮らしもキャリアも再スタート

 

Q1. 南相馬で暮らすことになった経緯を教えてください。

A.
心さん:
東日本大震災がなければ、今も家族で東京に暮らしていたと思います。震災が起こったのは、私たちが結婚して1年くらい経った頃。2人とも福祉の仕事にやりがいをもって働いていました。

私の親が南相馬で電気工事業を営んでいて、弟も一緒にその仕事をしていたんです。震災でそれまで一緒に働いていた従業員の方々も散り散りに避難して、仕事を再開するのが大変な状況だと相談されました。

その状況を夫に共有したら、「自分たちで一緒に助けられないか」って言ってくれて。私の弟が夫のことをすごく慕っていて、彼からすごい熱いプッシュがあって負けちゃったんだと思うんですけど(笑)。

震災後数ヶ月で環境にも不安があるなか、私から「来て」とは言えなかったからありがたかったですね。

 

元気さん:
お義父さんお義母さんにもお世話になってきたし、自分が行って一緒にやれればいいと思って。「来て」って言われて受け身で行ったら逃げ出すこともできちゃう。それより、自分から「やらせてください」と言いたかったのもありますね。


 

Q2. 南相馬で暮らすことを決めてから、どんな準備をしましたか?

A.
心さん:
前職が障がいのある人たちの支援で、関係性が大事な仕事でした。だから南相馬に行くのを2013年7月と決めて、徐々に後任の方に仕事を引き継いでいきました。半年くらいは時間をかけましたね。

 

元気さん:
来てからになりますが、全く新しい仕事に就くので、まずは「電気工事士2種」、次に1種、先日は「消防設備士」をとって……と仕事の幅を広げられるように、資格取得も必要でした。


 

Q3. 初めての南相馬での暮らし。戸惑ったことはありますか?

A.
元気さん:
いっぱいありましたよ。まず、自分は石川県出身なので、言葉がわからなくて。土地勘がない、知り合いがいない、初めての仕事……最初は全部不安でしたね。でも、ここに来た一番の目的は電気工事の仕事を手伝うこと。まずは仕事をしっかり覚えることに集中しようと気持ちを切り替えました。

少し経って長女が幼稚園に行くようになったら、心が友達の輪をつくってくれて、幼稚園のお母さん方やお父さん方と子どもを交えて一緒に遊べるようになっていきました。その繋がりから今は青年部にも入って活動しています。

義理の父が野馬追に出てるので、馬に乗る練習もして一緒に出させてもらって。そこからもつながりは広がりましたね。

南相馬市での暮らしを話す木村さん

職住至近で家族の時間もしっかり確保 子育てしやすい環境が何よりの利点

 

Q4. 今の暮らしで気に入っていることはどんなことですか?

A.
心さん:
戻ってきて一番よかったと思うのは子育てのしやすさですね。3人の子どもに恵まれたんですけど、家族5人で東京に暮らすことを考えると、預け先や金銭面の不安があるし、選択肢が少なくなっていただろうなと思います。ここにいて自分の親や、石川県にいる夫の親も支援してくれる環境にあって子育てできるのは、一番ありがたいことだと思います。

 

元気さん:
子どもたちも含めて5人で過ごす時間がしっかりあるんですよね。東京で夫婦で暮らしていた頃は通勤に2時間くらいかかってたので、夜の8時か9時くらいに家に帰って来て、ごはんを食べたら寝ちゃう感じだった。こっちに来たから、家族で一緒にごはんを食べて一緒に過ごす時間がたっぷりできたのは良かったと思います。

 

元気さん:
仕事に関しては、経験を積んでいくうちに技術だけじゃなくて「人対人の仕事」だと感じるようになりました。人が喜ぶための仕事はやりがいがあるし、ゼロから始めた仕事なので、できることが増えていくのが嬉しい。今は仕事が楽しいし、もっと技術を向上させたいとも思います。

 

心さん:
私は会社の事務方なので、夫が何もかも初めてで不安な時から一番身近で支えてこられたのはよかったです。

南相馬市での子育てについて話す木村さん

自然も遊び場もいっぱいで、子育てにはおすすめ 家族に必要なものを見極めて心構えや準備を

 

Q5. おふたりの夢を聞かせてください。

A.
心さん:
最近家を建てたんです。楽しい空間をつくって、家族がいつまでも仲良く一緒にいられたらいいなと思います。

 

元気さん:
家でバーベキューしたりキャンプしたりね。友達も近くに住んでるので、家族ぐるみの付き合いも続けながらやっていけたらいいですね。

 

心さん:
私の家族も仲が良かったので、子どもたちにも家が一番居心地がいい空間と思ってもらいたいです。

 

元気さん:
仕事では、まだまだ取りたい資格や技術はたくさんありますが、地域に必要とされる電気屋さんになっていければ嬉しいです。

公園で友達と遊ぶ子どもたち
南相馬市での暮らしを楽しむ木村さん夫妻

 

Q6. これから南相馬への移住を考えている人にメッセージをお願いします。

A.
心さん:
どこから移住するのかによりますが、私たちみたいに都心で暮らしている家族なら、やっぱり子育てのしやすさはおすすめできるポイントです。南相馬市内には子どもが遊べる施設もたくさんできてきてるんですよ。海や山も近いし、お金をかけずに楽しめますよ。

ただ、環境が大きく変わるから心構えや下調べはちゃんとしてきた方がいいのかな、と。

 

元気さん:
そうだよね。医療体制とかインフラは、家族によって必要な条件も違うと思うのでちゃんと把握して来た方がいいと思います。


 

スケジュール
5時30分 心さん起床
6時30分 元気さん起床、元気さん心さん朝食
7時20分 出勤
12時00分 社員みんなで食事
17時00分 仕事終了
18時00分 家族揃って夕食
19時00分 子どもとの時間
21時30分 就寝
木村さんと子どもたち

すべて0からのスタートを切った元気さんと、生まれ育った地に戻った心さん。お互いを思いやりながらお話ししてくれた姿が印象的でした。公園でお話を聞いている後ろでは3人のお子さんが、友達と元気に駆け回っていて、木村さん一家が着実に積み重ねてきた年月の尊さを実感。目下家づくりで頭がいっぱいと話していた2人。明るくて居心地のいい家が完成するに違いありません。

テキスト:小野民/写真:鈴木宇宙

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福島県南相馬市原町区本町二丁目27(北庁舎1階)

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ファクス:0244-23-7420
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更新日:2021年11月10日