海・山・川で思い切り遊んだ子ども時代 地域や人に恩返しする「育む」仕事

海・山・川で思い切り遊んだ子ども時代 地域や人に恩返しする「育む」仕事
小林茉由 さん(22)
こばやし・まゆ
2019年4月〜 南相馬市原町区在住
南相馬市原町区生まれ
(18歳):進学のため宮城県仙台市へ → (20歳):南相馬市へ
さゆり幼稚園教諭
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南相馬が大好きととびきりの笑顔で語る小林茉由さん。幼稚園教諭になるために2年間ふるさとを離れた以外は、ずっとこの地で暮らしてきました。子ども時代には、幼児から高校生までが集う自然教室に通いつめ、自然と異年齢が関わり育み、育まれる環境に身を置いたことも、今の仕事とつながる経験だと話します。育ててくれた地域への恩返しができたら。そんな想いを胸に歩き出した社会人3年生の現在地を聞きました。

中学生のときの職場体験先に就職 自分の想いと重なる考えが決め手に
Q1. 幼稚園の先生になったのはどうしてですか?
A.
中学校のときに、さゆり幼稚園で職場体験をさせてもらったんです。その時から保育士か幼稚園の先生になるぞ、と決まってはいました。
地元で働くことも自分の中では決めていたんです。都会のごちゃごちゃした感じがすごく苦手で、南相馬の山も川も海もある自然豊かな環境が好き。それは、子どもの頃からずっと変わりません。
大好きなふるさとで仕事をして、何か貢献したいとずっと思っていました。仙台の短大へ進学して、保育実習は南相馬で。さゆり幼稚園と、もう一カ所別の保育園でやらせていただきました。
どちらの園もそれぞれ違った魅力がありましたが、さゆり幼稚園での経験が、実習が終わってからもずっと心に残りました。毎朝お祈りの曲の伴奏をして子どもたちと歌うんですが、実習が終わってからも頭から離れなくてずっと弾いていたんです。教育者として、子どもが楽しめるように教えて、成長を見守っていく仕事ってすごく素敵だし、自分の想いに一番近いと感じたんです。
職場の雰囲気もすごくあたたかかったので、ここで働きたいと思ったのもありますね。それで就職を希望して、実際に働き始めて3年目です。
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Q2.実際に働いてみて、どうですか?
A.
常に頭の中では、仕事のこと、園児のことを考えている生活になりました。休みの日でも、「来週はこういう活動をこのねらいで進めていこう」というふうに頭に浮かんできます。でも、それが大変だと感じているかというと、そうでもないかもしれません。
たとえば、ずっと泣きながら登園していた子が、だんだん慣れて「幼稚園って楽しい!」と気持ちが変化していくのに立ち合ったり、私たちとの関わりや保護者の協力で何かができるようになるのを目の当たりにしたりすると、本当に嬉しい。こういう積み重ねがあるから、ずっとこの仕事をしていたいと思っています。
難しいのは、子ども一人ひとりに違う思いや個性があるので、みんな平等に同じ声かけをしていたらいい援助かといわれたらそうじゃないこと。一人ひとりの気持ちを汲み取りながら、寄り添って援助をするのは難しくて、日々反省です。
今はまだ経験不足で、「あぁ間違っちゃった」とか「こうすればよかった」ってことも日々あります。そういう反省を活かして改善してよりよい先生になっていきたいです。


自然の遊び場だけじゃない 子育てを応援するハードもソフトも充実
Q3. 子どもが育つ環境としてして南相馬はどんな場所ですか?
A.
自分の子ども時代の経験を振り返っても、今周りを見ても、やっぱり自然の豊かさが魅力だと思います。私が小さい頃は、いっぱい川遊びをして、山などにもよく登ったりして、本当に活発だったんですよ(笑)。
3歳くらいから週一で自然教室に通っていて、海、山、川、いろんなところに連れて行ってもらっていました。この経験は南相馬だからできたことかもしれない、とよく思います。
自分が小さい頃はお兄さんお姉さんたちにお世話してもらって、自分が大きくなったら今度は自分がお世話しながら引っ張っていくような感じの教室でした。
今は子どもが減ってその教室自体はやっていないのが残念ですが、いつか復活したら嬉しいですね。
自然以外でも、公園や雨のときでも遊べる屋内施設もどんどんできて、園児たちも「行って来たよー」と教えてくれます。行政が子育てしやすい場所にしようと頑張っているのも知っているし、もともとあるものも、新しい施設や仕組みも、子育てにはありがたい環境が揃っていると思います。
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Q4. 休日の過ごし方、よく行く場所を教えてください。
A.
近くだと、南相馬市立図書館はよく利用させていただいています。子ども達に読んであげたい絵本や楽譜を探しに行くことが多いです。子ども向けのイベントなんかもよくやっていますよね。
あとは、ちょっと遠出するならラーメンがすごく大好きなので、福島県内のラーメン屋さんを、同じくラーメン好きの父とドライブしながら巡っています。コロナ禍になってからは特に、家族と目当ての店に食べに行くのがささやかな楽しみでした。ラーメンは父とですが、母とはランチに行ったりもしますね。
家族の存在は大きくて、仲がいいし、実家住まいなので存分に甘えさせてもらっています(笑)。一度家を出てからの方が仲良くなった気がします。

「子育て」に力を入れている地域で 子どもに関わる仕事をするやりがい
Q5. これから南相馬への移住を考えている人にメッセージをお願いします。
A.
自然に恵まれたまちだと思います。あとは、南相馬に住んでる人たちは本当に温かいですし、一人暮らしが不安でも、助けてくれる人たちがたくさんいると思います。私が前向きに働けるのも、職場環境がよくて心が安定しているからでもあります。
働いて1年目のときは、本当に忘れちゃうこととか失敗が多くって。すごく保護者の方たちにはご迷惑をかけちゃったと思うんですけど、みなさん『先生いいんだよ!そういうことあるじゃん!』て見守って下さったからこそ、がんばれたんです。
保育園や幼稚園の先生のなり手はもっと必要で、南相馬で暮らしていて、幼稚園や保育園の先生になる場合は、奨学金もあるので調べてみてほしいです。
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【スケジュール】
6:00 起床し朝食や身支度
8:00 出勤
17:00 仕事終了
17:30 退勤
19:00 夕食
21:00 就寝
*夕食を食べたらすぐ寝てしまうことも多いので、次の朝早めに起きて仕事の確認をすることもあります。
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大好きな南相馬のこと、天職であろう幼稚園教諭の仕事のことを、弾ける笑顔で話してくれた小林さん。職場の先輩たち、子どもたち、そして保護者の人たちとも、打ち解けて接する様子は自然体で、こういうかたちで「恩返し」ができる日々って素敵だなと感じました。小林さんが幼稚園の想いに共感したように、子どもを健やかに育む想いがいろいろな人たちと重なりあっていけばいいですね。
テキスト:小野民/写真:鈴木宇宙
更新日:2021年12月08日