私を変えた初めての移住 南相馬で暮らすことを私が選んだ理由
私を変えた初めての移住 南相馬で暮らすことを私が選んだ理由
鈴木和実 さん(29歳)
すずき・かずみ
2020年5月~南相馬市原町区在住
福島県福島市生まれ
福島県福島市で前夫と結婚→ (27歳) :前夫の職場と実家がある南相馬市へ移住 → (29歳) : 現在単身となり南相馬市で暮らしている
社会福祉法人 竹水会 特別養護老人ホーム 竹水園 事務職
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南相馬への移住のきっかけは、前夫の職場と実家があったから。しかし、今ここで暮らし続けるという選択をしたのは、自分がこのまちを好きだからと朗らかな笑顔で話してくれた鈴木和実さん。移住をきっかけに変わった心境や、このまちでの暮らしが好きと思えたエピソードを聞きました。
不安よりもワクワクを抱えて初めての移住
Q1.南相馬に移住することになったきっかけを教えてください。
A.
結婚をして、しばらくは私が生まれ育った福島市で前夫と暮らしていました。しかし、夫の職場と実家が南相馬市にあったので、2020年の5月に2人でこちらに移ってきたんです。2022年3月に彼とは別れ、今は南相馬で一人暮らしをしています。
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Q2.移住することに不安はありませんでしたか?
A.
移住する前には南相馬に来たことがなかったのですが、初めて地元以外の場所で暮らすとあって、不安よりもワクワクの方が大きかったです。SNSで南相馬について、どんなまちなのか、どういう人たちがいるのかを調べて、イメージを膨らませてきました。
実際に来てみると、優しい方が多くて。南相馬に来てから、イベントや気になった場所には積極的に足を運んでみたんです。そこで、さまざまな世代や属性の方々と出会うことができました。このまちでは、人と人との距離が良い意味で近いので、私には心地いいんですよね。
このまちで暮らし続ける選択をしたのは、このまちと人が好きだから
Q3.南相馬市で暮らし続けようと思った理由は何だったのでしょうか?
A.
単身になり、実家のある福島市に戻ることももちろん考えました。でも私は、南相馬に来てから竹水園でパートとして勤務していたんです。この職場で働き続けたい、お世話になった上司の方や同僚の方たちと一緒に、ここで頑張りたいという気持ちがあり、南相馬に残る選択をしました。そのタイミングでパート勤務から正社員にならせていただいたんです。
それに、南相馬市には好きなところがたくさんあります。南相馬市立中央図書館は建物も雰囲気もとても素敵です。休日にはよく行き、図書館のテラス席で飲み物を飲みながら本や雑誌を読んでいると、高校生が楽しそうにしゃべったり勉強したりしている姿が見えて、「青春だなぁ」とこちらまでほほえましくなります。
市内の飲食店のお店の方とお客さんとの距離感も好きなんです。「Restaurant MADY」という私のお気に入りのお店は、オープンする前からまちの人たちがSNSを見て楽しみにしていて。オープン後は、たくさんの人たちが訪れてみんなで応援している、そんなあたたかい雰囲気がこのまちにはあるんですよね。先日私の母をMADYに連れて行き、母もお店の方も喜んでくれたのが、私も嬉しくて。市内に飲食店がすごく多いわけではないですが、だからこそ、お店の方とお客さんとの距離が近いと感じています。南相馬で暮らし続けたいと思ったのは、こういった人との関わりも好きだったからです。
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Q4.竹水園では、介護職から事務職へと職種を変えられたんですね?
A.
始めは介護福祉士として働いていたんです。利用者さんと直接関わり、生活を支える仕事が好きでやりがいを感じていました。しかし、今後働いていく中で、自分の体力面にも不安がありましたし、事務職にも興味をもっていたところ、ちょうど募集が出たので、異動の希望を出しました。まだ事務職として働き始めたばかりなので、職員の出勤管理や利用者さんの利用料管理など、今は覚えることに必死で業務を行いながら覚えています。
事務職として給与計算の業務を行うようになり、今まで介護福祉士として現場で働いて給料をいただいていたことのありがたみを改めて知ることができました。だからこそ、これからは私も竹水園の職員のみなさんが安心して働けるよう、サポートする側として学びながら仕事を覚えていきたいと思っています。
「このまちになじみたい」私を活動的に変えた移住
Q5.南相馬市に移住される前から、イベントや人との関わりに意欲的だったんですか?
A.
いいえ、もともとそんな活動的な性格ではなくて、福島市に住んでいた頃は特にイベントなどにも参加していませんでした。なぜ今こんなに自分が積極的になれたか不思議なくらいです。南相馬に来てから、このまちでの生活を充実させたいと思うようになりました。
移住して間もない頃に、南相馬市主催の『新しい働き方講座』を受講したり、『リノベーションまちづくり』の講演会に参加して、幅広い世代の方と出会い、今でも仲良くさせていただいています。定期的にごはんに行ったり、母親世代の女性から「野菜がたくさんあるから取りに来ない?」と連絡をいただいたりします。そんな周りの方々にすごくいい刺激をもらっていますし、暮らしが楽しくなりました。
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Q6.これから南相馬市でどのように暮らしていきたいですか?
A.
以前、原町区にある「マチ・ヒト・シゴトの結び場 NARU」というコワーキングスペースの窓ガラスに想いを描くイベントがあったんです。そこで、私は「南相馬でたくさんの人と仲良くNARU!」と書きました。今思い返すと、それが叶っているなと感じますし、これからもこのまちでたくさんの人に出会いたいです。
たくさんの人との出会いや職場にも恵まれて、やりたいことがどんどん湧いてきています。今はアロマテラピーの勉強もしているので、今後複業することも視野に入れて、自分に合った働き方を模索していきたいと思っています。
南相馬のわたしのお気に入り
北泉海岸
南相馬の海と空は本当にきれいです。特に北泉海岸が好きで、疲れた時や1人になりたい時はすぐ車を走らせます。海を眺めているだけで、元気が出てリフレッシュできるんですよね。そして、南相馬は海沿いの地域ということもあって、他の内陸の地域に比べ晴れている日が多いんです。晴れの日は気持ちが明るくなりますし、青々とした広い空を眺めているだけで癒されます。
移住のきっかけは受動的だったかもしれません。しかし、自らが楽しみ、このまちで暮らし続ける選択をしたのは自分の意志だと話してくれた鈴木さん。その表情はあたたかくもかっこよく見えました。移住というひょんなきっかけから、自分が変わることもある。そして、このまちの魅力は環境や風土がつくる"人"そのものなのかもしれないと感じました。
テキスト:髙橋慶香/写真:鈴木宇宙
更新日:2023年03月07日