同じ景色も視点が変われば違って見える 地元に戻り、世界でひとつの部品を作る

現在の仕事について話す吉田さん

同じ景色も視点が変われば違って見える 地元に戻り、世界でひとつの部品を作る

吉田 貴文  さん(31)

よしだ たかふみ

2014年4月〜 南相馬市原町区在住

 

南相馬市原町区生まれ

(18歳):進学で山梨県へ。環境エネルギーについて学ぶ → (22歳):南相馬市へUターンし、税務署の臨時職員として勤務→(26歳):株式会社タカワ精密へ入社

 

株式会社タカワ精密 設計士

--------------------------------

高校生の頃から、環境に優しいエネルギー開発に興味を持っていた吉田さん。
大学では、効率の良い発電システムについて学びました。しかし、学びを活かせる就職先を探すも、入社したいと思える企業とは出合えず地元に戻ることに。南相馬の企業に目を向けたのは、就職活動を始めてからのことだったそうです。数ある企業の中からタカワ精密に入社を決めた理由や、Uターンしてからの暮らしについて聞きました。

現在の暮らしについて話す吉田さん

Uターンのきっかけは難航した就職活動

Q1. 南相馬に戻ってこようと思ったきっかけを教えてください。


A.
就職活動がうまくいかなかったのが一番の理由です。環境エネルギーについて学ぶために山梨県の大学へ進学しましたが、長男ということもあり、将来的には南相馬に戻る気持ちがありました。在学中は、発電効率のいい火力発電システムを導入した場合の効果について、データを基に分析していました。地球の資源には限りがあるので、環境負荷を減らすにはどうしたらいいかを考えることに興味があったんです。


大学での研究が面白かったこともあり、就職活動のときにも環境問題に取り組んでいる企業を探しました。でも、10年くらい前のこと。当時は環境に配慮しながら事業をしたり、環境問題解決に取り組んだりする企業がとても少なかったんです。面接で志望動機や希望する職種を聞かれても、腑に落ちない感じが続きました。卒業が近づいてきたころには就職活動にいったん見切りをつけて、「地元に戻って仕事を探そう」と意思を固めていましたね。


地元の企業に初めて目を向けたのは、南相馬に帰ってきてからでした。高校生の頃は周りも進学する友人が多かったこともあり、就職する考えはなかったです。通学路にある会社の存在にさえ気づきませんでした。決して企業の数が少ないわけではないので、働くことがもう少し身近にあれば、高校卒業直後に地元で就職する選択をしていたかもしれません。

 

すべての仕事が新しい仲間と試行錯誤を重ねるものづくり

Q2. 就職先にタカワ精密を選んだ理由を教えてください。


A.
ハローワークで勧められたのが、タカワ精密に興味をもつきっかけでした。家から近かったこともあり足を運んだのですが、従業員の方たちがのびのびと働いている感じがして、雰囲気がいいなと感じたんです。


タカワ精密は、業種でくくると製造業に分類されます。具体的には、製品の検査をするための自動機やプレス金型などを作っています。自動機は検査以外に、組み立てや加工するものもあります。顧客から依頼された部品加工も行いますよ。


ものづくりに関する全てを自社完結できるのは、うちの強みですかね。ものの設計図を描く「設計」、設計をもとに金属等の形をつくる「加工」、加工されたものの「組み立て」、組み立てられたものを動かす「制御」。全ての工程に専門家がいるので、注文に対して融通を効かせながらものづくりができるのは、中小企業ならではの面白さだと思いました。

 

--------------------------------

Q3. 普段はどんな仕事をされていますか?


A.
私は「設計士」として働いています。製品の部品単体の設計ではなく、自動機などの設備や治具(じぐ)の設計をしています。治具とは、部品の加工を補助する装置です。最近だと、金属の円盤に穴をあけるという加工のための治具を設計しました。加工するたびに円盤が動いてしまうと正確な場所に穴があけられず、できあがる製品にばらつきが出てしまうので、固定する必要があるためです。

専用のソフトを使って設計を行なう
設計図はパソコンで描いていく

設計は常に新しいものを作る仕事なので、頭を悩ませることも多いです。そんな時は設計士の同僚や他部署の仲間に相談をして、アイデアを広げることを心がけています。話すことで「そういうやり方があったか!」と前進できることがあるので、一人で抱え込まないことは大切。設計段階から、他部署と連携することは制作時の混乱を防ぐことにもつながります。

 

--------------------------------

Q4. 印象に残っている仕事はありますか?


A.
同じものを設計することはないので、一つひとつの仕事が新鮮で、飽きることはないですね。一つの部品が完成するまでには、設計で1〜2カ月、形になるまで約半年かかるので、その度に達成感があります。


その中でも特に印象に残っているのは、鹿児島にある企業からの依頼です。弊社は、鹿児島にある機械と連動させる装置製作を担当していたのですが、別の企業が装置の制御を担当していたんです。制御が別の企業で、顧客が所有している機械と連動させるということで、社内で完結しなかったため、苦労しました。私が担当していた設計部分でも、話がまとまるまでにいつも以上に時間も手間もかかったのを覚えています。鹿児島に出向いて、無事にやりきることができた時にはホッとしましたね。

 

仕事について話す吉田さん

住みよい環境に人が集まり、風土をつくる

Q5. 休日の過ごし方を教えてください。


A.
競馬が趣味で、福島市の競馬場によく行きます。迫力のあるレースを見たり、競走馬を引退した馬に会いに行ったりするのが楽しみです。賭け事はあまりしませんが、競争馬に出資をしています。出資していた競走馬が引退することもありますが、その子から生まれた仔馬がまた走るようになったりして、成長を見られるのは嬉しい。南相馬の文化行事・相馬野馬追でも、いろいろな馬を見るのは楽しいです。


あとは、自宅でハンドドリップしたコーヒーを飲みながら、リラックスして過ごすことも多いですね。大学時代に喫茶店のアルバイトをしていた時に、淹れ方を教わったんです。お湯の温度や抽出量をはかりながら、自分好みの淹れ方を探っています。

 

--------------------------------

Q6. 移住を考えている方へメッセージをお願いします。


A.
南相馬は、昔から移住者の多い地域です。温暖な気候であまり雪が降らないため、会津や北陸などの豪雪地帯から、1年中仕事ができる環境を求めて移住してくる人が多かったそうです。私の先祖も新潟出身ですよ。


福島ロボットテストフィールドができてからは、ロボットに関する新しい産業が生まれたこともあり、働くために南相馬に来る人も増えていると感じます。僕自身を含め、進学等でいったん地元を離れて、戻ってくるパターンもありますよね。人の出入りが盛んな土地柄なので、多様な人を受け入れることへの抵抗もあまりないのかと。よそから来る新しい人でも、馴染みやすいのではないでしょうか。

 

自身のUターンについて話す吉田さん

南相馬のわたしのお気に入り

よつわりぱん

原町製パンのよつわりパン

 

高校生の頃から、つい手に取ってしまうのが原町製パンの「よつわりパン」です。中にホイップクリームとこしあんが入っていて、たまに食べたくなるんですよね。桃やイチゴなど、季節限定のフレーバーもありますが、定番が一番。自分で淹れたコーヒーと一緒に食べながら、ホッと一息つく時間が至福です。

吉田さんの職場での1枚

吉田さんは、部品発注のメール一通であってもダブルチェックを必ずするそうです。小さなミスが大きな間違いにつながらないように、常に注意深く仕事に取り組まれていることがひしひしと伝わってきます。日々いろいろなものを安心して使えるのは、吉田さんのように、丁寧に仕事をされる方々のおかげなのだと改めて感じる取材でした。

テキスト:蒔田志保/写真:白圡亮次

この記事に関するお問い合わせ先

商工観光部 移住定住課


〒975-8686
福島県南相馬市原町区本町二丁目27(北庁舎1階)


直通電話:0244-24-5269
ファクス:0244-23-7420
お問い合わせメールフォーム

更新日:2023年03月07日