大好きな動物に関わりたくて飛び込んだ 初心者歓迎の乗馬クラブで働く
大好きな動物に関わりたくて飛び込んだ 初心者歓迎の乗馬クラブで働く
相山 由香 さん(27)
そうやま・ゆか
2020年10月〜 南相馬市原町区在住
福島県白河市生まれ
(18歳):高校卒業後、白河市の縫製会社に就職 → (25歳):カリフォルニアライディングへの就職を機に、南相馬市へ移住
カリフォルニアライディング インストラクター
兼
ベースキャプテン
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2020年、南相馬市に新しい乗馬クラブ「カリフォルニアライディング」がオープンしました。馬をより身近に感じられる乗馬クラブを目指してつくられたこの場所に、オープニングスタッフとして就職した、白河市出身の相山由香さん。動物が好きだった彼女は、求人を見て応募を即決したといいます。しかし、動物に携わる仕事は初めてのこと。未経験から挑戦する、南相馬での仕事について相山さんに聞きました。
キャンプもできる乗馬クラブ 「カリフォルニアライディング」
Q1. 「カリフォルニアライディング」はどんな場所ですか?
A.
乗馬とキャンプ、通称”馬キャン”ができるカジュアルな乗馬クラブです。乗馬を身近に感じてもらえたらという想いが一番にあって、初心者の方はもちろん、乗馬に興味がない人でも訪れたくなるようなクラブを目指しています。
経営元は、原町区にある飲食店「サンフェスタ」なんです。そのため、キャンプやBBQができる仕組みにできました。お店のメニューそのままの料理を外で楽しんでもらえます。
他にも、例えば馬小屋のデザインにこだわっていたり、乗馬をするときの服装もTシャツにジーンズのようなラフなスタイルでもOKとしていたり。馬術を本格的に磨こうと意気込まなくとも、ふらっと立ち寄れるような雰囲気づくりをしています。会員にならなくても、電話一本で乗馬の予約ができて、他のクラブに比べると低料金なので、乗馬を体験してみたい方も利用しやすいんじゃないかと思います。
Q2.カリフォルニアライディングに就職するまでの経緯を教えてください。
A.
前職は縫製会社で衣服を縫っていたのですが、コロナ禍の影響を受けて、転職活動を余儀なくされる状況になってしまって。もともと動物が好きだったので、動物に携われる仕事を県内で探すことにしました。動物病院なども検討したのですが、資格がないと就職できないところが多く、なかなかいいところと出合えなかったです。
そんな時に、就職相談をしていた市の職業紹介所で「カリフォルニアライディング」を紹介されたんです。乗馬クラブへの就職は、資格や経験が問われたり、女性というだけで就職しにくかったりする中で、募集要項に、年齢問わず、未経験者歓迎って書いてあってすごくありがたいなと思い、面接を受けることをすぐに決めました。入社するタイミングが施設のオープン前ということもあり、新しい場所をつくっていくのってどんな感じなんだろうというのにも興味がありましたね。
面接から就職までは1カ月くらい。白河と南相馬は高速道路を使っても2時間半くらいかかるので、結構遠いんですよね。カリフォルニアライディングで働きたい気持ちが強かったのもあり、面接と同時に家探しも済ませて、すぐに移住できるよう準備しました。
乗馬インストラクターと飲食店スタッフ二足のわらじを履くからこそ
Q3. 相山さんの働き方について教えてください。
A.
カリフォルニアライディングで動物たちのお世話や乗馬レッスンをするインストラクターと、サンフェスタの店員、二つの職場を掛け持ちしています。日中は乗馬レッスンをして、夜はお店で食事を運ぶ、みたいな。それぞれ繁忙期があるので、その割合は変化するんですけどね。
どちらの仕事も初めての職種なので、学ぶことはたくさん。仕事内容は違いますが、飲食店での仕事が、乗馬レッスンで活きることもあるんですよ。例えば、お子さんには割れにくいコップを渡そうとか、目の前のお客様に合わせてサービス提供をする大切さは、接客するなかで学んだことです。
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Q4.未経験から乗馬インストラクターを目指すのは、特にハードルが高そうに思えます。就職前から馬とは関わっていたのですか?
A.
白河市にいるときに、乗馬同好会に入っていました。そこで乗馬ができるメンバーに教わりながら、私も乗馬することはありましたね。
ただ、自分が人に教える立場になるのは初めてだったので、入社後に乗馬経験の豊富なオーナーに教わりながら、馬や乗馬については一から勉強しました。動物が大好きで、この仕事に挑戦したい気持ちには自信があったので、新しいことでも不安より楽しみの方が大きかったです。
嬉しいことに努力が実り、入社から約半年後に乗馬インストラクターになれました。諦めるのではなく、絶対にやる!と決めて、頑張ることが大切なんだと思います。
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Q5. 仕事でやりがいを感じるのはどんな時ですか?
A.
レッスンや乗馬体験では、「乗馬が楽しかった!」と気持ちよく帰ってもらえるよう心がけています。レッスンの内容を会員さんに合わせて変えたり、同じ方でも体調や様子をみながらその時々で提案をしたり。コミュニケーションをとりながら、乗馬を通して楽しい時間をつくっていくのが面白いです。
会員さんとのイベントで、北海道へ乗馬しに行ったことも印象に残っています。乗馬する環境が変わると、見ている風景や乗り心地に変化もあるので、みなさんが念入りに準備や練習に取り組んでいました。その気持ちに応えられるよう、レッスンを組み立てたり、イベントの工程を組んだりしていたんです。イベント当日は、私もすごく楽しくて。参加者のみなさんがケガもなく、「参加してよかった!」と帰ってこられた時にはホッとしたと同時に、大きなやりがいを感じました。
県内外の人が訪れる乗馬クラブを目指して
Q6. 今後の目標を教えてください。
A.
福島県の乗馬クラブといえば「カリフォルニアライディング」といわれるような、乗馬クラブをつくれたらいいなと思っています。地元の人に限らず、県内外の人にも訪れてほしいなと。会員にならなくても参加できるイベントなども企画して、一人でも多くの人に乗馬を身近に感じてもらいたいです。
南相馬では、まちなかに馬がいることが受け入れられている一方で、「これまで乗馬する機会がなかった」という人もいます。だからこそ、乗馬に関わるハードルを下げて、いろんな人に乗りに来てもらいたい。ごはんが美味しいことや、動物に会えるからといった理由で、ここに来てもらえるのも嬉しいですね。
南相馬のわたしのお気に入り
カリフォルニアライディングのグラウンド
会員さんが馬に乗っている風景を見るのが好きです。イベントをすると、普段は一人で乗馬をしている会員さんたちが集まって、乗馬する人に声援を送り合ったりするのですが、その様子は特にお気に入り。今後は乗馬できる範囲を広げて、みなさんと一緒にいろいろな風景を見に行けたら嬉しいです。

「南相馬の人たちは、本当にあったかい。会員さん同士で声を掛け合ったりしながら、新しいメンバーもどんどん仲間の輪に入っていくんです」と、嬉しそうに話してくれた相山さん。相山さんのエネルギッシュで思いやりを感じる話ぶりに元気をもらう取材でした。
テキスト:蒔田志保/写真:鈴木宇宙
更新日:2023年06月20日