野菜を通して夢と縁を繋いでいく ふるさとのこれからを見ていきたい

地物野菜の競りを行う遠藤さん

野菜を通して夢と縁を繋いでいく ふるさとのこれからを見ていきたい

遠藤 知伸  さん(31)
えんどう・とものぶ
2014年〜 南相馬市鹿島区在住


南相馬市鹿島区市生まれ

(18歳):郡山市の日本大学工学部に進学。→(22歳):大学卒業後就職のため南相馬市へUターン。→(26歳):二度の転職を経て、現在の株式会社原町中央青果市場に就職。

 

株式会社原町中央青果市場

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幼い頃から機械やものづくりが好きだったことから、日大工学部に進学した遠藤さん。大学1年生の春休み、南相馬市に帰省中に東日本大震災を経験しました。
その後、故郷である南相馬市の変化を「当事者としてこの目で見ていきたい」と就職を機にUターンすることを決意。現在は、両親の影響で身近だった農業や野菜に惹かれて就いた原町中央青果市場で働いています。
帰郷してからおよそ10年。仕事のこと、これから思い描く南相馬での暮らしについて伺いました。

原町中央青果市場に応募したきっかけを話す遠藤さん

農業や野菜に導かれ、原町中央青果市場へ就職

Q1. 原町中央青果市場で働くことになった経緯を教えてください。
 

A.
私は幼い頃から機械やものづくりが好きだったため、高校卒業後は郡山市にある日本大学工学部に進学をしました。その頃は就職は仙台でしようかと漠然と考えていたんです。しかし、大学1年生の春休みに南相馬市で東日本大震災を経験して、地元南相馬が5年後10年後どう変わっていくのかを当事者として見ていきたいと思い、就職を機に南相馬市へ戻ってきました。
 

就職では、はじめにガーゼや脱脂綿などの衛生材料を扱う工場に勤務しました。その後、自動車部品会社で生産管理の仕事に就きましたが、夜中まで勤務することが多く、体力的な厳しさを感じ退職をしました。
 

ちょうどその頃、兼業農家をしていた両親が仕事を退職して専業農家になったんです。私も幼少期から野菜作りや米作りは身近にあったので、農業に興味があり、一緒にやりたいと伝えました。しかし、両親としては若いうちは会社に勤めて経験や収入を得た方がいいという考えでしたので、求人を探していたところ、原町中央青果市場を見つけて応募したんです。
 

私としては、農業は機械やものづくりに通ずるものがあると感じていますし、原町中央青果市場で働き、学び得ることも農業に活かせる大事なことだと思い、就職を決意しました。

 

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Q2.具体的にはどんなお仕事をされているのでしょうか。
 

A.
野菜の流通の一端を担う営業職に就いています。大きく分けて2つの仕事があるのですが、まずは地物野菜を競りにかけて市内の八百屋さんや仲卸業者に販売することです。もう一つは、業者さんから要望を受け、市内では出回っていない野菜を周辺の中央卸売市場から買いつけて販売を行っています。
 

青果市場の仕事の中でも、競りは毎回すごく緊張するんですよ。八百屋さんや卸売業者さんとの真剣勝負なので、指の指示を間違えずにちゃんと拾えるか神経を尖らせています。しっかりと競りを行えた後は、毎回ほっとしますね。
 

原町中央青果市場での競りの様子
市場に並ぶ採れたての地物野菜たち

Q3.仕事のやりがいは何ですか?
 

A.
必要なところに必要な分だけ野菜を届けられたときにはやりがいを感じます。やはり、丹精込めて作られた野菜が余ってしまうのは嫌ですしね。余すことなく販売ができて、なおかつ八百屋さんや業者さんを通して、一般の消費者の方に口にしてもらえるのは流通に関わる人間として嬉しいです。
 

また、八百屋さんに信頼していただいて、地元にない野菜を頼まれた際に、いい野菜を見つけて販売できたときには、「これいいね!」「ありがとう!」という言葉をいただいて、やっていてよかったなと思います。
 

野菜が繋いでくれた人の縁

Q4.南相馬市に戻ってから地元との繋がりを感じる機会はありますか?
 

A.
以前、個人で焼き鳥屋に行ったんです。その時に、朝自分が競りにかけた地物のアスパラが出てきたんですが、すごく柔らかくておいしくて。地元で作られた野菜が、自分も一端を担っている流通にのり、地元の八百屋さんや飲食店を通して消費者に届き、こうやっておいしさを感じてもらえるのかと、自分が作ったわけではないですが、嬉しくなりました。そして、いつもお仕事でお世話になっている地元の方々が気にかけてくださり、こうして野菜を通じて地元の方々との縁を感じています。
 

また、2015年から南相馬市で開催されていた「農業復興チャレンジ塾」に参加したのですが、地元農家さんと繋がることができ、野菜を通して繋がりが広がっているのを実感しています。
 

野菜が繋ぐ地域の縁を笑顔で話す遠藤さん

Q5.仕事以外の時間はどのように過ごされていますか?
 

A.
青果市場の仕事は朝が早く、始業が5時45分です。その分終業時間が14時なので、明るい時間に帰って、その後の時間を自由に使えるのは気に入っています。ほぼ毎日終業後は実家の農業を手伝いに行っています。
 

幼い頃から両親が農業を頑張っている姿を見ていましたし、そのおかげもあって兄弟3人が大学に進学できたと思っています。自分なりに農業について調べたりもしていて、決して楽な仕事ではないと理解していますが、頑張った分だけ成果の出る夢のある仕事だと思っています。
 

南相馬市の農業は震災後、農業の担い手不足や農地の再建・維持が他の地域よりも難しく、農業を続けたくても続けられなかった人がたくさんいました。そのため、震災の前後では、生産と受注のバランスや農業の発展において雲泥の差があると思うんです。今は原町中央青果市場で野菜の流通や目利きを学びながら、ゆくゆくは自分も生産者の一人として南相馬市の農業を盛り上げていけたらという夢を密かに持っています。

静かな時間がゆっくり流れる南相馬で暮らしていきたい

Q6. 遠藤さんは今年結婚されたそうですが、変化はありましたか?
 

A.
はい、今年7月に結婚して鹿島区で二人暮らしを始めました。妻は郡山市から南相馬市に移住してきましたが、まだバタバタしていてあまり出かけられてないんです。でも、海には連れて行き、妻もお気に入りの場所になっていますね。
 

南相馬市で行っている新婚世帯向けの「結婚新生活支援事業助成金」は申請予定で、アパートの家賃や家電購入の補助が受けられるので、ありがたい支援だなと感じています。

妻と一緒に自然にふれながら、ゆっくりした時間を過ごしたいと話す遠藤さん

南相馬のわたしのお気に入り

南相馬の海

南相馬の海

南相馬の海には思い入れもあり、やっぱり好きですね。18歳で自動車免許を取ってからは、毎年北泉海岸に初日の出を見に行くのが恒例になっていました。烏崎海岸は、震災後景色は変わりましたが、風力発電の風車が4基並ぶ風景もきれいだと周りに自慢したくなります。南相馬の海は夫婦のお気に入りです。

職場である原町中央青果市場での遠藤さん

青果市場の仕事で地元野菜の流通の一端を担っている遠藤さん。仕事でも野菜を扱い、実家の農業の手伝いでも野菜に触れ、「ずっと野菜ですね」と笑っていました。「野菜に触れていると癒されるし、農業には夢がある」と語ってくれた表情には、両親への感謝と夢を実現することで南相馬に貢献したいという固い決意を感じました。

テキスト:髙橋慶香/写真:鈴木穣蔵

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更新日:2023年03月09日