博物館の中で虫さがし ―前編―(平成30年3月1日)

今回は少し変わったお話をしたいと思います。
寒い時期は生き物の活動も鈍く、あまり虫を探すのに適した季節ではありませんが、博物館ではこんな時期でも虫さがしを行っています。とはいっても野外で網を持って・・・というものではなく、「博物館の中」の虫さがしです。
博物館の中にも虫がいる?

意外かもしれませんが、博物館の中でも虫が見つかることがあるのです。
南相馬市博物館は東ヶ丘公園の林に囲まれており、林にはさまざまな虫が住んでいるので季節ごとにいろいろな虫が博物館の中に迷い込んできます。
夏は自動ドアの開け閉めに合わせてハエやガの仲間が入ってくることもあります。
冬にドアの隙間から入ってくるワラジムシが物陰で見つかることもあります。
秋の夜に仕事をしていると事務室の隣のエントランスホールからコオロギの鳴き声が聞こえてくる、なんていうこともあります。(もちろんすぐに捕まえますけどね。)
粘着トラップを床にしかけてみると、クモの仲間、ゲジ、ムカデ、カマドウマ、アリなどいろいろ虫がつかまります。
話は少しそれますが、博物館の事務室には足元まである大きな窓があります。夏の夜に仕事をしていると、この窓を外から「ドン」と叩く音がしたので驚いて窓を開けると足元に大きなウシガエルがいた・・・ということがありました。ウシガエルは窓に集まっていた虫を食べようとしていたようです。ときどき夜に博物館を訪ねてくる方もいらっしゃいますが、「ヒト」以外が訪ねてくることも時々あって驚かされます。
あまりたくさんの生き物が入り込んでくるのは困りものですが、博物館を一歩外へ出てしまえばそこは生き物たちの世界なのだということがよくわかりますね。
なぜ博物館の中で虫をさがすの?
さて、博物館の中で虫を探している理由ですが、虫が好きだから・・・というわけではなく、じつは博物館の資料を食べてしまう虫が発生していないか調べるためです。
博物館の収蔵庫の中には紙や毛皮などでできている、ある種の虫にとってはごちそうになる資料が沢山保存されています。
しかも収蔵庫の中は適切な温度と湿度が一年中そろっていて、夏も冬もありません。こうした環境も虫の繁殖にはうってつけというわけです。
市民の皆さんからお預かりしている大切な資料が虫に食べられてしまわないように、博物館の収蔵庫では一年を通して虫の監視を続けているのです。
それでは実際には収蔵庫の中でどのような虫が見られるでしょうか。
来月更新の「博物館の中で虫さがし ―後編―」でご紹介します。
(仲川 邦広)

- この記事に関するお問い合わせ先
- このページに関するアンケート
-
より良いウェブサイトにするために、このページのご感想をお聞かせください。
更新日:2024年04月01日