“サッタロウ"という魚(平成28年3月7日)

世の中は未知のことがごまんとあって、知らずに損をすること、知らなければ良かったこと、知っていても知らなくてもどうってことないこと、ちょっと得した気分になれること・・・等々たくさんあります。いったい自分は死ぬまでにどれだけのことを知り得るのか。そればかりはその時が来るまで計り知れないことですね。
さて、博物館の学芸員たちは、現在企画中の展示に向けてそれぞれ調査を進めているところです。そんな調査の一環として海の恵みを使った郷土料理も調査しています。その中で初めてお目にかかった魚がありましたのでご紹介します。
相馬地方では「サッタロウ」とか「オマツリ」、とか呼ばれている魚で、本当の名前は「ケムシカジカ」と言います。いわき市では「ヤマノカミ」、宮城県では「ボッケ」、山形県では「イクジ」などと呼ばれ、各地で親しまれているようです。旬の時期は11月、12月あたりで、シーズンはすでに過ぎてしまいました。
相馬地方でも昔から親しまれてきた魚です。図鑑やはく製を見るかぎりでは、決して見た目の良い魚ではありません。頭が大きくてしっぽが細く、皮がザラザラして気持ち悪い模様をしています。いったいどんな味なのか、おおよそ醜い魚は美味しいと相場が決まっているので、とても気になるところでした。

運良くサッタロウを入手して調理出来る方がいらっしゃり、取材させていただきました。「サッタロウのどぶ汁」と「サッタロウと丸大根の煮付け」を作っていただき、どぶ汁を試食させていただきました。皮を一枚はぐと外見とは全く違った白いきれいな身が現れます。身は非常に淡泊でおいしく、アンコウよりもしっかりしていて川魚のようにつまっている印象です。どぶ汁は汁の中に肝を溶かして作ります。今回手に入ったサッタロウは時期外れで肝が小さかったため作るのに苦労されたようです。


「サッタロウは卵がうまい。」サッタロウを知っている人は口をそろえて言います。一晩醤油漬けにしてご飯にのせて食べるそうです。残念ながらこちらも時期が遅く卵を見せていただくことは出来ませんでした。次の機会に期待します。
文化としての食をこの地域に伝えて行くために、作っていただいた料理はレプリカにして展示する予定です。他にもさまざまな料理をレプリカにする予定ですので、本コーナーでも少しずつご紹介していければと思っております。ご興味のある方もそうでない方もお楽しみに。
(川崎 悠)


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更新日:2024年04月01日