夏の味方はカツオの焼き漬け(平成27年6月24日)

今年は初鰹を食べ損ね、最近やっと食べることが出来た。旬がやって来ると無性に食べたくなる味というのが四季折々にあるもので、無意識のうちに体は季節を感じ取っているのだろう。実に正直である。
福島県の浜通り地方ではカツオの独特な食べ方がある。「カツオの焼き漬け」あるいは「カツオの焼き浸し」と呼ばれるものだ。夏になると連日の様に食卓に上るので、てっきり一般的なものだと思っていたのだが、県内でも浜通りに限った食べ方なのである。「何でも当たり前だと思うなよ。」とカツオが教えてくれた気がした10代の夏だった。カツオさん、ありがとう。
さて、「カツオの焼き漬け」はカツオを焼いて生姜の入った醤油ベースの漬け汁に漬け込んだものである。焼くというよりは多めの油で揚げ焼きにするといった感じだ。火を通して漬け込むので夏でも日持ちがする。家庭によっては小麦粉をはたいてから焼いたり、完全に揚げてしまう場合もある。生姜もすりおろしたりスライスしたり家庭によって様々だ。夏の暑い時期に火を使う料理をするのは大変な重労働となるので、この「カツオの焼き漬け」は「一品あると楽よねー。」という主婦の強い味方と言えよう。
明治30年頃までは南相馬市原町区でも鰹船があって小規模ながら鰹漁が行われており、戦後も鰹漁船があったというので、カツオは昔からこの辺でも身近な魚だったと考えられる。(参照:原町市史 第9巻 特別編 民俗)刺身ばかりでも飽きてしまうし、カツオを無駄なくおいしく食べきれるように生まれた知恵の料理なのであろう。
夏休みの夕飯の食卓にはカツオの焼き漬け、食後にはスイカ、漂うのは蚊取り線香の香り。これぞ“THE夏”の情景であります。

【材料】
カツオの切身・・・10切れ
ショウガ・・・大きいもの1片
油・・・適量
漬け汁
しょうゆ・・・大さじ3
みりん・・・大さじ3
酒・・・大さじ3
砂糖・・・小さじ1弱

【作り方】
- 先に漬け汁を作っておく。漬け汁の調味料を火にかけ、煮つめてアルコールをとばし、ショウガを加えて冷ます。ショウガはすりおろしてもスライスでもOK。
- カツオを油で揚げ焼きにする。両面に揚げ色がつくまで上下返しながら焼き、熱いうちに漬け汁の中へ入れる。
- 漬け汁に入れた後も上下返して味をしみ込ませる。半日か一晩漬け込んだら完成。午前中作れば晩御飯には食べられる。
このレシピは昨年度南相馬市の生涯学習センターで行われた講座の取材と原町市食生活改善推進連絡協議会発行の『伝えたいはらまちの味』をもとに作成しました。写真は全て取材時のものです。
昔はみりん、酒、砂糖などは入れず、しょうゆだけとか、しょうゆとショウガだけという作り方が一般的だったようです。現代の作り方は食生活の充実が感じられます。
(川崎 悠)






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更新日:2024年04月01日