三日とろろ知ってますか?(平成27年4月1日)



今年のお正月のこと。新年を迎えた日の新聞は折り込み広告のパラダイスで、種々様々な広告がここぞとばかりにやって来る。折り込み広告ファンにとっては一年で最もテンションの上がる日ではなかろうか。そんなことを考えながらそれらを眺め、ふと手にしたスーパーの広告。「お正月の三日にはとろろを食べましょう」とかいう宣伝文句が目に留まった。
スーパーも季節の行事をよく調べているものだ。「三日とろろ」の風習を利用してとろろ芋を売ろうという作戦らしい。お正月の弱った胃には優しいとろろが恋しいところだし、調理の手間もかからならないので、「へぇー、正月三日にはとろろを食べるのか。よし、今日はとろろだ!」なんてことになる家庭が続出することは想像に難くない。ハロウィン然り、恵方巻き然り、私たちは惑わされやすい人種なのだ。
「三日とろろ」と言えば、かつて世に衝撃を与えたマラソン選手の故・円谷幸吉氏の遺書は、「父上様母上様三日とろろ美味しうございました。」という一文からから始まる。この一件で記憶にある方も多いのではないだろうか。そして「三日とろろって何?」と疑問を抱いた方も多かったのではないだろうか。
「三日とろろ」・・・語呂が良く、何となく親しみ深さを感じる言葉である。これは正月三日にとろろを食べるという年中行事の一つだ。しかし、全国的な風習ではなく、主に東北、関東、中部地方などに伝わっており、三日とろろと言っても三日ではなく、元日や二日、その他の日など別な日に食べる地域もあるという。現時点でその分布や食べる日についての詳細は調査不十分であり、今後調査する方向だ。
お正月の行事として現在まで続けている家庭は少ないと思うが、その意味合いとして多くの地域に共通するのが、無病息災を願うということだ。当館のある相双地域では、とろろ飯を神棚にお供えしてから夕食に家族みんなで食べたという。また、魔除けとしてとろろを家の門口にぬったり、家の周りにまいたりして、悪いものが入ってこないようにする。その他には、お正月の疲れた胃を休ませるという意味がある。
無病息災と魔除けといえば、似たような風習に七草がゆがある。本来の食べる目的と胃を休ませるという二次的要素が共通している。三日のあとすぐ七日にも同じような行事をやるのは少々面倒かもしれない。やっているうちに「どっちか片方やれば十分だ」と思うようになっても仕方ないだろう。そんな理由かどうか分からないが、今では七草がゆの方がメジャーとなり、三日とろろはすっかり身をひそめた。そんな「三日とろろ」に今、スーパー業界からのラブコールがやって来たのだ。果たして再ブレイクはあるのだろうか・・・。
(川崎 悠)

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更新日:2024年04月01日