報徳仕法ってどんなこと?(平成28年9月1日)

今年の10月7日(金曜日)、8日(土曜日)に「第22回全国報徳サミット南相馬市大会」が開催されます。報徳サミットは、報徳仕法や二宮尊徳にゆかりのある市町村が集まり、尊徳の教えをこれからのひとづくり・まちづくりへどのように活かし、取り組むべきかを話し合い、共有し、広めるべく、加盟している17市町村の持ち回りで毎回開催されています。
南相馬市をはじめとする藩政時代の奥州中村藩は、二宮尊徳の教えである報徳仕法を実践し、さらにその結果が成果としてあらわれた地域です。
ところで「報徳仕法」っていったい何でしょうか?簡単にご紹介したいと思います。
「報徳仕法」ってどんなこと?
報徳仕法は二宮尊徳の教えにもとづき、飢饉などで荒廃した農村を建て直す政策のことです。報徳仕法は文政5年(1822)に下野国桜町領(現在の栃木県真岡市あたり)から始まり、関東地方を中心に、実施された地域は広がっていきました。
中村藩では、天明3~4年(1783~1784)の大凶作「天明の飢饉」によって大きな打撃を受け、人口の激減、田畑の荒廃が進み、藩の財政、存続は危機的な状況にありました。そこで中村藩でも農村建て直し政策のひとつとして、人口増加のため浄土真宗門徒移民政策や、財政立て直しのために報徳仕法を実施するのです。この報徳仕法の実施には、富田高慶というキーパーソンの存在が必要不可欠でした。
二宮尊徳の一番弟子、富田高慶

木造富田高慶坐像 南相馬市博物館所蔵 佐藤朝山(玄々)作
富田高慶(とみた こうけい(たかよし))は文化11年(1814)中村藩士の家に生まれました。困窮を極めていた藩を建て直すため江戸で勉学に励んでいた高慶は、報徳仕法の評判を知りその方法を学ぼうと二宮尊徳に入門し、一番弟子となりました。
そして熱心に尊徳に学んだ高慶は、尊徳から絶大な信頼を得て、中村藩建て直しの代理指導を任されたのです。
高慶の指導のもと、中村藩では弘化2年(1845)に坪田村・成田村(現在の相馬市)から報徳仕法を実施し、元治元年(1864)までに、領内226の村の半分近くに当たる101の村で実施され、そのうちの4分の1にあたる55の村で建て直しに成功しました。
二宮尊徳の死後、高慶は尊徳の教えを世に広めるため、『報徳記』や『報徳論』を編纂しました。そして明治23年(1890)、76歳で生涯を閉じるまで報徳仕法と二宮家のために尽力したのです。

報徳記原稿一部 南相馬市所蔵
これは二宮尊徳の伝記を著わした『報徳記』の原稿とされる富田高慶の自筆のものです。
中村藩の報徳仕法で実施されたこと
- 用水路や溜池を修理、新設し、田畑への水を確保。
- 移住者への住居、生活費の援助。
- 村民の投票により公正に働き者を選出・表彰し、褒美を与え労働意欲を高め、さらに働き者には賃金の貸し付けも行った。
- 農民の家屋修理、建て替えなどに賃金を援助。
- 凶作に備え、ヒエの栽培を推奨。
- 農作業の合間や夜なべに縄ないをさせ、その縄を売った一部金を積み立てて報徳金とした。報徳仕法が終了すると、積み立て金の2倍の金額で返済された。
報徳仕法の原理
富田高慶がまとめた『報徳記』では、報徳仕法の根本を「至誠」とし、これを実施するにあたって「勤労」、「分度」、「推譲」が必須だとされました。
- 至誠(しせい)・・・とても誠実であること。尊徳の教えはすべて「至誠」が根底にある。
- 勤労(きんろう)・・・心身を労して懸命に仕事に励むこと。
- 分度(ぶんど)・・・自分の経済的状況に応じた範囲内で、身の丈にあった生活をすること。
- 推譲(すいじょう)・・・将来へ向けた貯蓄をし、また他者や社会のために一部を譲ること。
ここまでは報徳仕法についてのごく一部に過ぎません。各地で実施された二宮尊徳の教えはもっと深く、短くまとめるには困難なものです。もし報徳仕法についてもっと知りたい!と思った方は、10月に開催される「第22回全国報徳サミット南相馬市大会 」に参加してみてはいかがでしょうか?
また、南相馬市博物館でも報徳仕法に関する特別展「報徳仕法と浄土真宗門徒移民 ―奥州中村藩の復興への取組み― 」が9月17日(土曜日)から始まりますので、当館へもご来館いただければと思います。
二宮尊徳は、約200年も前に報徳仕法という政策を実施しました。この教えは現代でも広く学ばれ、参考にされています。尊徳がどれほど聡明で人格者であったかが想像されますね。現在の日本経済を発展させた数々の企業家たちも、その教えに少なからぬ影響を受けています。
私たちは、もう一度報徳仕法の原理を振り返り、実践すべきことがあるのではないでしょうか。
参考:『報徳仕法 南相馬市版「二宮金次郎・富田高慶からの贈りもの」』南相馬市 平成20年
(川崎 悠)


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更新日:2024年04月01日