“なりかぶと”って何? ~変り兜の世界~(令和元年6月1日)

なりかぶと・・・聞き馴染みがないフレーズかもしれません。これは野馬追に欠かせない甲冑のパーツ・兜(かぶと)にかかわる用語です。「変(かわ)り兜」という、意匠を凝らして個性的な形をした兜は、何を象(かたど)って作ったかによって「〇〇なりかぶと(形兜)」と名付けられるのです。
「星兜(ほしかぶと)」「筋兜(すじかぶと)」と「変り兜」の流れ
オーソドックスな兜は、細長い三角形の鉄板を鋲(びょう)でつなぎあわせて、人がかぶれるような半球形を形作るのが基本ですが、つなぎ合わせ部分の鋲が飛び出てイボ状の突起がいくつも見えるものを「星兜(ほしかぶと)」といい、もともと平安時代中頃に発生しました。南北朝時代頃には、鋲をつぶして見えないようにして、鉄板の縁を折り返して接ぎ目が筋状に見える「筋兜(すじかぶと)」が発生しました。この星兜・筋兜は、発生以降ずっと作られ続けた主流の形式で、日本の兜の王道と言っていいでしょう。
しかし、戦国時代あたりから、それまでの星兜・筋兜に比べて異形で、個性的な形に変化させた「変り兜」があらわれてきます。とくに上級武士たちは戦場での自己アピールのため、競ってその意匠をこらすようになっていきました。

イボ状の突起が見える「星兜」

筋だけが見える「筋兜」
変り兜のバリエーション
冒頭で触れたように、変り兜は、何をモチーフにして作ったかによって「〇〇なりかぶと(形兜)」と名付けられます。例えば、人間の頭のように真ん丸な兜は「頭形兜(ずなりかぶと)」、桃の実のように見える「桃形兜(ももなりかぶと)」、中国の役人がかぶる冠をあらわした「唐冠形兜(とうかんなりかぶと)」、人間の髪形をあらわした「総髪(そうごう)形兜」などなど。
ではここで、いくつか変り兜を紹介してみましょう。

唐冠形(とうかんなり)兜
(南相馬市博物館蔵)

総髪形(そうごうなり)兜
(南相馬市博物館蔵)

廻り兜
(南相馬市博物館蔵)
いかがでしょうか。ここで紹介したのはほんの一例です。最後の「廻り兜」は、一見普通の兜っぽく見えますが、兜鉢がクルクル回る面白い機能が付いています。なぜこんなカラクリを付けたのか不思議ですね。変り兜は戦国時代が終わっても作られ続け、着用者の好みによって動植物・神仏・器物などあらゆるものをモチーフとして、和紙の張子(はりこ)・鉄の打ち出し技術などで表現され、多彩なバリエーションが生み出されました。
その発想の豊かさや造形の面白さ、表現力や技術の高さなど、変り兜には多くの見どころがあり、“わびさび”とは真逆の華々しい魅力があります。これも言わば“クールジャパン”の一つ。変り兜は海外の武具コレクターにも大変人気があります。
南相馬市博物館で6月29日(土曜日)から始まる企画展『武士の装い』は、甲冑武具を中心とした展示会で、変り兜もいくつか展示する予定です。野馬追本番ではあまり見られないような、さまざまなバリエーションの武具類が見られると思います。ぜひご覧ください。
(二上 文彦)

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更新日:2024年04月01日