中山間地域の農地維持の『プッシュ型支援』を開始
国が推進する「プッシュ型支援」を衛星データとAIで後押し
市では、LAND INSIGHT株式会社(本社:福島県南相馬市、代表取締役社長:遠藤嵩大)、Penguin Labs合同会社(本社:東京都中央区、共同代表CEO:赤塚慎平)と共同で、中山間地域の農地維持を支援する実証事業を開始します。
本実証では、中山間地域等直接支払交付金について、集落からの申請を待つ従来の運用から、行政側が制度活用を働きかける「プッシュ型支援」に転換する国の政策動向を受けて実施するものです。
衛星データ・地形データをAIで分析して、交付対象となり得る農地を可視化し、制度が適用できる可能性がありながら、交付を受けていない地域を特定します。これにより、南相馬市から集落へ制度活用の働きかけを支援するとともに、対象農地や申請に伴う確認や行政業務の負担軽減を目指します。
行政が「待つ」から「働きかける」仕組みへ
中山間地域等直接支払制度は、平地と比べ農業の生産条件が不利な中山間地域で農業生産活動を継続するための活動を行う集落に交付金を支払う国の制度です。2024年度の交付総額は約531億円にのぼります。
一方、農林水産省の推計によると、制度の対象となり得る田のうち、制度が実施されている割合は、急傾斜農地で約5割、緩傾斜農地では約3割です。両者を合わせると、対象となり得る田78.9万haのうち、制度が実施されているのは28.3万ha、約36%にとどまり、6割超の農地で制度が活用されていない計算になります。
高齢化や担い手不足に加え、制度の認知不足や申請手続の負担などを背景に、農地を維持するための支援制度が、必要とする集落に十分届いていないことが課題となっています。
こうした状況をうけ、農林水産省が2026年6月に公表した「新たな水田政策の基本的考え方・仕組み」では、中山間地域等直接支払について、集落からの申請を待つ従来の運用から行政側が制度活用を働きかける「プッシュ型」へ転換する方向性が示されました。あわせて、対象農地の選定を効率化するため、デジタル技術の活用を進めることも盛り込まれています。2026年度からは、全国地方農政局が制度活用の少ない市町村への働きかけを開始する方針です。
市町村が集落へ制度活用を働きかけるためには、対象候補農地と未活用地域の把握が欠かせませんが、人による特定には大きな負担が伴います。本実証では、衛星データ・地形データとAIを活用することで、こうした作業を効率化し、国が掲げる「プッシュ型支援」を南相馬市の現場から先行して実装します。
「見つける・届ける・申請する」を、衛星データとAIで支える
本実証では、南相馬市内の旧石神村・旧上真野村エリアにある約12,000筆の農地を対象に、衛星データ・地形データをAIで分析し、交付対象候補農地の抽出から申請業務まで支援する仕組みを構築・検証します。
- 交付対象候補農地の可視化 ― 国土地理院の標高データや衛星データを解析し、交付要件を満たす可能性のある農地を、一筆単位で抽出します。傾斜区分や農地のまとまり(連担)を自動で判定し、空中写真上に色分けして表示します
- 制度の活用状況とギャップの可視化 ― 交付対象候補農地と現在の交付状況を照合し、制度が活用されていない地域や、南相馬市が優先的に働きかける集落を特定します
- 交付見込額の試算 ― 交付対象候補となる農地について、年間の想定交付額と協定期間5年間の累計額を試算し、集落・農家への制度説明に活用できる形で提示します
- 申請・関連業務の効率化―抽出した農地の情報を、申請や関連業務に活かせるよう、AIの活用を含めて、業務効率化を南相馬市とともに検討します
本実証で開発中のシステム画面イメージ(南相馬市 旧上真野村エリア)。農地一筆ごとの傾斜区分や連担の判定結果を空中写真上に色分けし、画像や想定交付額を表示。
本システムによる判定および交付額は、公開データに基づく自動推計です。最終的な交付対象の可否は、市による現地確認等を経て判断されます。
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更新日:2026年07月28日