薮内(やぶうち)の十一面観音菩薩立像が解体修理されました(平成30年5月1日)

薮内の十一面観音(市指定有形文化財 昭和43年2月1日指定)
南相馬市小高区上浦字薮内の観音堂に所在する薮内の十一面観音菩薩立像は、技法などから鎌倉時代の作と考えられ、小高区でも古い仏像の一つです。江戸時代前期の延宝8年(1680)に大きな修理がなされ、長年にわたり地域の人々の篤い信仰を集めてきました。
観音様のお祭りと地域の絆
観音様は薮内地区の里仏として、薮内組と呼ばれる14軒の隣組で祀られていました。
お祭りは、本来は旧暦9月20日でしたが、新暦の10月20日に変わったものの、稲扱きで忙しかったり、高度成長期以降は勤め人が多くなったこともあって、近年では新暦の9月第1土曜日に夜籠り、翌日曜日に同慶寺の僧が読経してお祭りするようになりました。祭りの期日は多少変わっても、地域の人々が集まり、仏に願いを込めて絆を深める大切な行事でした。
東日本大震災による被害
観音像は長年の老朽化により、矧目(はぎめ)のゆるみや欠失部分も多く、全体が塵芥汚れに覆われていました。さらに、東日本大震災の激しい揺れにより、観音像が堂の壁に寄り掛かるように倒れて光背が破損し、台座の矧目は大きく離れ、仏像の本体を保持できない状態になってしまいました。
解体修理の実施
このため、平成29年度に地元からの浄財と住友財団・南相馬市の助成により、観音像の解体修理を実施することとなりました。修理は仏像修理に多くの実績を持つ専門業者にお願いしました。
こうして、観音像は約1年の月日をかけて解体修理を終え、さる4月26日に上浦公会堂でお披露目されました。
観音像の概要
本体は単髻(たんけい)を結い、髻頂(けいちょう)に仏面、正面に化物(けぶつ)地髪部に頭上面を計11個表しています。首は三道相(横向きの線が入って三段になっている仏相のひとつ)を表し。左手は曲げて蓮華(れんげ:ハスの花)を持ちます。右手は垂れ下げ、手のひらを前に向けて錫杖(しゃくじょう)に添え、蓮華座の上に直立しています。本体は木造(カヤ材)の一木造で背部を内刳り(うちぐり)、後の補修で背板・左右の側面部などを別材(ヒノキ材)で矧(は)いでいます。
表面は本面は白目・髪際の毛・眉・髭を墨線で描き、唇は朱彩、体部は大半が素地仕上げとなっています。
大きさは、像高120.5センチメートル、肘張29.0センチメートル、体部幅27.0センチメートル、体部奥21.0センチメートル。光背は円光で高さ129.0センチメートル・円光径40.0センチメートル。台座は蓮華座で、高さ40.2センチメートル・幅61.0センチメートル・奥行48.5センチメートルを測ります。

薮内観音堂

薮内の十一面観音菩薩立像 写真提供:明古堂
博物館で観音像を見学できます
この観音像は、4月27日(金曜日)から6月29日(金曜日)まで博物館のエントランスホールで一般公開され、秋には修理を終えた観音堂に安置される予定です。
観音様が再び地域の人々に祀られて、震災と原発事故により乱れた地域に安寧をもたらし、人々の絆を取り戻してくれることでしょう。
(二本松 文雄)

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更新日:2024年04月01日