よくある野馬追の質問「神旗争奪戦では何かいただけるんですか?」(令和3年6月1日)

更新日:2024年04月01日

馬、甲冑姿の男の子、傘、てるてる坊主、アジサイ、長靴などが並ぶ帯状の画像
相馬野馬追の2日目の行事「神旗争奪戦」で騎馬武者が神旗を目がけて集まっているところ

迫力の「神旗争奪戦」。念願の神旗を獲得した騎馬武者は、何かいただけるんですか?という質問がよくあります。

相馬野馬追の人気行事といえば、やはり「神旗争奪戦」ですね。花火で上空に打ち上げられ、舞い下りてくる神旗を獲得するため、騎馬武者たちが一斉に群がる光景はとても勇壮です。武者たちの多くは、年に一度、この舞台で神旗を獲得することに情熱を燃やし、日々の鍛錬に励んでいます。

さて、博物館の展示コーナーにも、その神旗争奪戦のジオラマがありますが、来館者をご案内していると、よく聞かれるのが「神旗を獲得した方は、賞品などいただけるんですか?」という質問。なるほど、あまり取り上げられることがない話題ですし、素朴に気になる疑問のようです。

結論から言うと“いただけます”。今回はそのあたりを少し紹介してみましょう。

そもそも「神旗」とは・・・?

左から相馬小高神社と書かれた黄色の旗、相馬太田神社と書いた赤い旗、相馬中村神社と書いた青い旗

三社の神旗

神旗は、野馬追で中心的な役割を果たす、相馬三社(相馬太田神社・相馬小高神社・相馬中村神社)の社号が書かれた、横35センチ・長さ150センチほどの布で、太田神社が赤・小高神社が黄・中村神社が青と色分けされています。行事では、花火の玉の中に神旗が2本ずつ詰められ、合計40本が時間差で打ち上げられます。

野馬追は数百年もの伝統を誇りますが、神旗争奪戦が始まったのは明治時代のことで、長い歴史の中では、比較的新しい行事です。江戸時代までは、「野馬追」という名の通り、馬牧の中にいた「野馬」を騎馬武者が「追う」行事でした。しかし、明治時代に牧が廃止され、野馬が捕獲・公売されてしまったため、「野馬追」ができなくなり、その後に始まったのが「神旗争奪戦」です(明治16年[1883]には行われていた記録があります)。

つまり神旗とは、かつて騎馬武者が追いかけていた“野馬に代わるもの”とご理解ください。

神旗争奪戦でいただけるもの

赤い旗を掴んだ騎馬武者が高い場所にいる軍者という野馬追の幹部に旗を手渡しているところ

本陣山で、獲得した赤い神旗(相馬太田神社の神旗)を納めるところ。騎馬武者(右)から軍者(左:野馬追の幹部)に神旗を手渡します。

さて本題です。神旗を勝ち取った武者は、それを片手に、観衆の拍手喝采を浴びながら、本陣山を駆け上がります。神輿が安置され、総大将が待つ山頂に着くと、獲得の報告とともに神旗を納め、以下の褒賞を受け取ります。

①神社の御札

獲得した神旗に記された社号に応じた神社の御札。たとえば、赤い神旗(太田神社の旗)を獲得したら、太田神社の御札をいただきます。

②神旗のレプリカ

獲得した神旗と同じ仕様のレプリカ。獲得した神旗は、本陣山で納める習わしなので、実物はいただけません。しかし「神旗そのものが欲しい!」という武者たちの声もあり、近年、レプリカを贈呈するようになりました。

③副賞

地元企業・商店等のスポンサーから提供された品々。ちなみに令和元年度(2019)、もっとも名誉とされる“一番旗”を獲得した武者への副賞は、「商品券(3万円分)、工業用扇風機、みそ汁&たまごスープのもと、日本酒2本、洗剤セット、ワンショルダーバッグ、オイルギフト、ミニ傘、キッチンペーパー、煎餅(合計:6万3900円分相当)」でした(情報提供:相馬野馬追執行委員会)。年ごとに内容は変わるようです。

副賞もいろいろ―「昔はカツオとかスイカ、馬にぶら下げて帰ってたよ」

青い神旗を獲得した騎馬武者が左手に持った旗を掲げながら本陣山を駆け上る様子

神旗を獲得した騎馬武者。拍手喝采を浴びながら、誇らしげに本陣山を駈け上ります。副賞もいただけますが、神旗獲得の高揚感と名誉のほうが嬉しいそうです。

副賞も時代によってさまざまです。ベテラン騎馬武者に聞いてみると、「昭和中頃以前は、魚屋でカツオ1本とか、八百屋でスイカ丸ごと1個とかあったね。神旗に副賞引換券が付いてて、野馬追帰りに馬に乗ったまま、その券を持って商店街に寄って、賞品と交換して、馬の鞍にカツオとかスイカ結い付けて、ぶら下げて帰るんだよ(笑)」という、何とも味のある光景だったそう。神旗を何本も獲得した武者にいたっては、たくさんの副賞を持ち帰るために、後ろにリヤカーや軽トラックを従えて、商店街で交換した賞品を次つぎに積みあげながら、悠々と馬に乗って帰宅し、余分な副賞をご近所さんに振る舞ったりしたそうです。

ちなみに、現存する昭和54年(1979)の副賞一覧表を見ると、一番旗の副賞は「金一封(2口)、カット生地、プレスハム、炭酸飲料2種、ウイスキー、清酒、ワイン、洗剤、粉石けん、メモスタンド」とあります。金一封が2口…おいくらほど包まれていたんでしょうね。 副賞はあくまでも副賞、もらって嬉しいものではありますが、参加している騎馬武者の皆さんは、副賞が欲しいわけではなく、神旗を獲得したときの高揚感と名誉が一番嬉しいそうです。普段は一般人として過ごす方たちも、この日ばかりは“武士”になりきって参加しています。神旗獲得は、1年間の鍛錬が報われる瞬間であるとともに、武士として手柄を立てた、ということなんですね。

(二上 文彦)

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