夜の森公園の歴史(令和8年4月1日)

公園ではなかった「夜の森」
原町区三島町の夜の森公園は、現在は「公園」として市民に親しまれています。夜の森公園はもともと「公園」ではなく、江戸時代に野馬追原と呼ばれた原にある小高い丘で、その頃に描かれた絵図には「よの森」「夜野森」などと記されています。
江戸時代末から明治時代初めに編纂された中村藩の地誌「奥相志」には、昔は広大な原が広がっていたため「南山(現在地不詳)」に登らなければ野馬追を見物することができなかったと伝えています。そして、この原に山があれば壮観な野馬追を見物できるのにと嘆いていたところ、一夜にして山ができたことから「夜嶺」と名づけられたと「夜の森」の由来を記しています。
周囲に建物などもなく原を見渡すことができる夜の森は、野馬追の絶好の見物場所として知られていました。野馬追を描いた絵図には、必ずといっていいほど、野馬追見物でにぎわう夜の森が描かれています。
安政6年(1859)の野馬追のときには、見物客がおよそ1万人いるなかで、半分以上の5500人もの人が夜の森で見物していたという記録も残っています。
見物客でにぎわう「夜の森」 当館所蔵
「奥州相馬妙見祭 其二馬追図」部分
「野馬追大絵図」部分
「夜の森」の公園化
昭和8年(1933)に夜の森公園内に建立された佐藤徳助銅像
明治時代になると、夜の森周辺は官有地に設定されたため、許可のない一般人の立ち入りは禁じられていました。その一方で四方を見渡すことができ、風光明媚な場所として知られていたため、町民からは夜の森の公園化が望まれていました。
この公園化に尽力した人物が当時「野馬追町長」とも呼ばれた原町長佐藤徳助です。佐藤町長は、国民的祝賀行事となった皇太子嘉仁親王(のちの大正天皇)の成婚を記念する記念公園とするため、夜の森の公園化を請願しました。請願の結果、払い下げの許可が下り、明治33年(1900)に「夜の森公園」が開園しました。
公園として開園して以降、桜や梅、桃などが植樹され、これらの花が咲く春には花見客が多く訪れるようになりました。大正7年に(1918)刊行された『相馬原町案内』には、原町八景のひとつ「夜ノ森の桜花」として、「騒人絶ゆること」ない夜の森公園を紹介しています。
原町八景(『相馬原町案内』部分/当館蔵)
右上から:「本陣山の日の出」「夜ノ森の桜花」「舘山の紅葉」「渋佐浜千鳥」
左上から:「陣ケ崎の夕日」「新田川の納涼」「植松の晴雪」「雲雀野の月」
イベント会場だった「夜の森公園」
公園となった夜の森公園は、さまざまなイベントの会場となり、原町第一小学校や相馬農業高校の運動会なども夜の森公園で開催されていました。
とくに、相馬農業高校は、昭和43年(1968)まで運動会を夜の森公園で開催していました。これは、相馬農業高校は実習畑や畜舎などに敷地の大半を使用していたため、校庭がなかったことによります。そのため学校近くの夜の森公園を校庭として使用していました。その校庭が完成したのは昭和44年(1969)になってからで、当時の新聞には「相馬農高 宿願のグラウンド完成」という大きな見出しが載せられ、在校生やPTAの協力のもと、開校以来待望していた校庭が完成したことが報道されました(『福島民友新聞』昭和44年9月23日付)。
相馬農業高校が校庭を整備した背景には、「野馬追菊人形まつり」と「つつじ人形まつり」があります。このふたつのイベントは、夏の野馬追に対する観光資源とするために、観光協会などによって企画されました。菊人形まつりは秋の観光資源として昭和38年(1963)10月に第1回が開催され、つつじ人形まつりは春の観光資源として昭和40年(1965)4月に第1回が開催されています。菊人形まつりとつつじ人形は、どちらも夜の森公園を会場として、多くの観光客でにぎわいました(つつじ人形まつりは、当初は旭公園〔原町区旭町〕を会場としていましたが、昭和42年〔1967〕から会場を夜の森公園に変更しました)。
このようにイベント会場として夜の森公園が使用されるようになったために、当時在校生が1000人を超えていた相馬農業高校が、校庭として夜の森公園を使用するには支障が出るようになりました。そこで、新たに校庭を整備することになったのです。
「野馬追菊人形まつり」(昭和38年/当館蔵)
「つつじ人形まつり」(昭和42年以降/当館蔵)
現在、桜の名所としても知られ、散歩コースとして多くの市民が利用している夜の森公園には、さまざまな歴史があり、原町の歴史を知るうえで欠かせない場所ということができます。
(森 晃洋)

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更新日:2026年04月01日