あなたはどんな「タイプ」が気になる?~「タイプ標本」のおはなし(平成29年11月1日)

更新日:2024年04月01日

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南相馬市のキャラクター郷くんとノマくんのイラスト

 「どんなタイプが気になる?」と聞かれると、好きな男女の性格とか容姿の話で盛り上がってしまうかもしれませんが・・・今回はまったく違うお話です。今回は、タイプはタイプでも「タイプ標本」の話。いったいタイプ標本とは何でしょう・・・?

「タイプ標本」って?

 新種の学名を付けるための記載論文中で使用され、学名の基準として指定された標本のこと・・・と言われてもチョッとわかりにくいかもしれませんね。
 例えばの話ですが、南相馬市から恐竜時代の始祖鳥(しそちょう)のような化石が発見されたとします。その化石が本当に始祖鳥かどうかを調べるためには、まず「これぞ始祖鳥!」という基準になる標本と比べなくてはいけません。そうなると、イギリスの大英博物館に収蔵されている「始祖鳥のタイプ標本」を調べなくてはいけないのです。つまりタイプ標本とは、新しい標本が発見されたとき、それが既存のものであるかないか、新種かどうかを調べるとき、比較しなければならない、種の基準になる非常に大切な標本のことです。
 ということで、タイプ標本は世界に通じる貴重な標本ですが、特に、世界に一つしかない完全な基準になるものを「ホロタイプ標本(完模式標本)」と言います。その標本が南相馬市博物館という一地方の博物館に8点(植物化石5点・アンモナイト化石2点・カニ化石1点)も収蔵されているのです。

南相馬市博物館の「タイプ標本」

 南相馬市内で発見された新種化石のタイプ標本のなかから、今回は代表的なものを5つ紹介しましょう。みなさんはどのタイプ標本が気になるでしょうか?

ニルソニオクレイダス・タイラエ

ニルソニオクレイダス・タイラエ

 ニルソニオクレイダス・タイラエ
ジュラ紀後期 栃窪層 南相馬市鹿島区産 市天然記念物
 
ソテツ類の仲間。中生代を代表するソテツ類の葉「ニルソニア」が、幹に付いた状態で発見された化石を「ニルソニオクレイダス」属といいます。採集者の平宗雄さん(鹿島区在住)の名前をとって、「タイラエ」という種名が付けられ、世界で4番目のニルソニオクレイダス属の新種として発表されました。

ニルソニオクレイダス・ジャポニカス

ニルソニオクレイダス・ジャポニカス

 ニルソニオクレイダス・ジャポニカス
ジュラ紀後期 栃窪層 南相馬市鹿島区産 市天然記念物
 
ソテツ類の仲間。切れ込みが入った帯状の葉が付く特徴をもつニルソニオクレイダス。葉っぱが短枝から放射状に生えていて、短枝がつる状の幹についています。「ニルソニオクレイダス・ジャポニカス」という種名で、世界で5番目のニルソニオクレイダス属の新種として発表されました。

アウラコスフィンクトイデス・タイライ

アウラコスフィンクトイデス・タイライ

 アウラコスフィンクトイデス・タイライ
ジュラ紀後期 中ノ沢層 南相馬市鹿島区産

平成20年(2008)、国内で約30年ぶりに発表された新種のアンモナイト。タイプ標本の採集者・平宗雄さんの名字をとって、アウラコスフィンクトイデス属の新種名として「タイライ」と名付けられました。
成長すると、30センチを超える大きさに育ちます。

南相馬市鹿島区産のとても小さいカニの甲羅。プラノプロソポン・カシマエンシスの化石

プラノプロソポン・カシマエンシス

(青いスケールは5ミリ)

 プラノプロソポン・カシマエンシス
ジュラ紀後期 中ノ沢層 南相馬市鹿島区産
 
幅5.4mmという、とても小さいカニの甲羅。のこぎりの歯状の突起が残り、表面は半球状の小さな粒で覆われているなど、保存状態が良く、産地名の鹿島区にちなんでプラノプラソポン属の新種名として「カシマエンシス」と名付けられました。
 化石が発見されたのが昭和61年(1986)、新種として発表されたのが24年後の平成22年(2010)でした。化石の世界では、発見から正式に論文で発表されるまで、このように時間がかかることがよくあります。

ダルマシセラス・ムネオイ

ダルマシセラス・ムネオイ

 ダルマシセラス・ムネオイ
白亜紀最前期 小山田層 南相馬市鹿島区産
 
アンモナイトの仲間。タイプ標本の採集者・平宗雄さんの名をとって、ダルマシセラス属の新種名として「ムネオイ」と名付けられました。
 成長はじめの殻(から)はやや蜜巻(みつま)きで、装飾(肋[ろく]・イボなど)がみられますが、成長するにしたがって殻の巻きがほどけてきて、装飾も弱くなってくる特徴があります。

平 宗雄さん

平 宗雄さん

 ここに紹介したタイプ標本は、すべて南相馬市鹿島区在住の平宗雄さんが発見したものです。平さんは若いころから化石や洞窟をはじめとした「地学」に興味を持ち、おもに相馬地方を中心として東日本全域にわたって化石採集や地質調査を続け、数々の大発見を成し遂げてきました。いくつかの標本の学名には平さんの名前が付いています。つまり、平さんの功績が化石の名前として後世にずっと残ることになったのです。
 南相馬市は「化石の宝庫」と言えるほど多くの化石が採れる場所ですが、そのきっかけを作ったパイオニアが平さんです。博物館はこうした地域の皆さんの多大なご協力のもとで成り立っています。そして、そのおかげで、後世にかけがえのない大切なたからものを伝えることができるのです。

貴重なタイプ標本を展示します!

 タイプ標本はとても貴重な標本なので、普段は収蔵庫に保管しておきますが、11月3日(金・祝)から開催する特別展『東北おし葉標本展』にあわせて、今回紹介した植物化石のタイプ標本2点と、紹介できなかった植物化石「ペローデア・ニッポニカ」、「テニエイタス・エロンガタス」、「テニオプテリス・ソウマエンシス」の3点のタイプ標本をエントランスホールに展示します。特別展とあわせてぜひご覧ください!

(二上 文彦)

南相馬市のキャラクター郷くんとノマくんのイラスト

 

この記事に関するお問い合わせ先

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〒975-0051
福島県南相馬市原町区牛来字出口194

電話:0244-23-6421
ファクス:0244-24-6933
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