トンボの秋 ―赤トンボの飛ぶ ふるさとの風景、ふたたび―(平成29年10月1日)

今年の夏は福島県内各地でも雨が多く、梅雨のような天気ばかり続きました。農家の方々は、農作物の生育状況がご心配だったことと思います。異常気象という言葉を最近よく聞きますが、こんな時、四季の気候や移ろいは、大切であるとともに、美しく素晴らしいものだなと感じます。日本の自然環境と農業の営みは、この四季の移り変わりを上手に利用しながら、共に歩んできました。
今回は、「赤トンボ」のご紹介をいたします。稲の頭垂れる田んぼや、ススキ揺れる川原で赤トンボの大群を見て、秋の訪れを感じたという方も多いのではないでしょうか。
日本には、約200種のトンボが生息し、福島県内でも90種類以上のトンボが確認されているそうです。私たちの住む南相馬市では、野山や川の岸辺、水田地帯や人家の周り、海辺の湧水地などで、50種類ほどのトンボが確認されています。
さて、赤トンボですが、俗に「赤トンボ」と呼ばれるトンボは、トンボ科に属し、市内ではアキアカネ、ノシメトンボ、ミヤマアカネ、マイコアカネ、ナツアカネなど6種類ほどが確認されています。
このうち、良く知られるアキアカネは、頭(顔)と胸が褐色で、腹部が真っ赤なトンボです。大移動をする赤トンボとして知られ、平地の池や水田で育ち、夏になると山に移動して涼みながら成熟します。そして体色が赤くなって成熟する秋に、平地へと戻ってきて産卵し一生を終えます。みなさんが8月に高原や高い山に行った時、赤トンボの大群を見かけたら、このアキアカネである可能性があります。
ただし、大移動する赤トンボはアキアカネだけで、他の種類の赤トンボは、近くの林や山に少しだけしか移動しないようです。
もう1種類、市内で見られる赤トンボとして、マイコアカネをご紹介します。マイコアカネは、平地から丘陵地の池や水路などの周りに生息しています。秋、成熟すると顔が青白くなり、これが舞妓さんのお化粧にたとえられ、名前の由来ともなっています。多くの図鑑に、成熟して体色が赤く、顔が青白いきれいなオスの写真が掲載されていて、ご覧になった方も多いかもしれません。今回、体色が黄褐色のメスの写真を掲載いたしますが、肝心のオスは撮影時に逃げられてしまいました。興味のある方は、野外で図鑑片手に観察してみませんか。オスの撮影時、逃げる直前にカメラのレンズ越しに見た顔は、なるほど、青白くきれいでした。自然界で、あんな色彩のトンボがいるなんて、とても不思議です。


トンボといえば、震災前に原町区の川の河口で確認されていたヒヌマイトトンボは残念ながらまだ再発見されていません。震災からの復興事業が進むなか、南相馬市らしい、ふるさとの原風景やのどかな景色、生き物も大切にしていきたいですね。
(稲葉 修)

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更新日:2024年04月01日