春の夜は○○の匂い?(令和3年4月1日)

今回はちょっとおかしなタイトルを付けました。さて、「○○」に入る言葉はなんでしょうか。
それは毎年4月のはじめの時期のことです。この頃、日が落ちてしばらくすると、博物館のある東ヶ丘公園の中では何とも言えない匂いがあたりにぷーんとただよってきます。この匂いを正確に表現するのは難しいのですが、公園の利用者さんからは「動物の匂いがする」と言われたことがありますし、他の職員に聞くと動物のエサの匂いだという人もいます。私はカップラーメンの粉末スープの匂いがすると思いますが、いずれにせよ森林のイメージで思い浮かべるような清々しい香りとは違うようです。
ではこの匂いの正体は何なのでしょうか。ヒントはこの現象が決まって毎年春のこの時期に起こるということです。しかも、これは公園の中や南相馬市だけでみられることではありません。というのも、私が学生で神奈川県にいたころにも、林の近くで夜に同じ匂いを嗅いだことがあったためです。
「季節にともなって広い範囲で観察されるということは、自然現象の可能性が高いな」 そんなことを考えながら、公園内を探してみると、ちょうど小さな花が咲いていることに気が付きます。
まさか、こんな小さな花で公園全体にただよう匂いを出せるのだろうか?そう疑問に思いつつも花に顔を近づけてみると、弱いながらも確かにあの匂いがしています。そう、原因はこの花「ヒサカキ」だったのです。
ヒサカキは暖かい地域の里山に生える野生の低木です。一つの枝に数十の花をつけ、樹全体では数千個にはなるでしょう。それが公園内のあちこちに生えているのですから、匂いも強くなるわけです。
さて、このヒサカキは福島県の浜通り地方(太平洋沿岸)では比較的普通に見られる植物ですが、内陸の中通り地方や会津地方には野生では分布していません。海沿いの地域にしかみられない春の風物詩として、今年は意識して鼻を利かせてみてください。

ヒサカキの花はひとつの直径が5ミリほど。コンビニやスーパーでもお彼岸の時期には仏花や神棚用に榊として売られている。
(仲川 邦広)

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更新日:2024年04月01日