南相馬市の水草―用水路でみられる花ばな(令和6年8月1日)


バイカモの花(南相馬市原町区中太田)
(本記事は「広報みなみそうま」の令和6年8月号に掲載したコラム「おしえて博物館(60)」をインターネット公開用に再編集したものです。)
今年も暑い盛りの時期になりましたが、今回はひとつ涼しい話として、水中で生活する植物―水草について紹介したいと思います。
水中に適応した特殊な植物―水草
水草というとどのようなものを思い浮かべるでしょうか。典型的なものでは水中で葉が光合成する「沈水植物」、ほかにはスイレンのように水面に浮いた葉をつくる「浮葉植物」などがあります。水草は湖沼や河川のような淡水域に生育するものから、海中など塩水に適応したものなど、世界に約2800種が知られています。
一般的な植物では、葉の表面の小さな穴から空気中の二酸化炭素や酸素などのガスを交換しますが、特に水草のうち沈水植物では葉に気孔をつくらず、水に溶け込んだガスを直接吸収するといった特殊化がみられます。
市内では50種ほどの水草が分布しており、ため池のほか、河川や水路の湧水が混ざる場所でよくみられます。
用水路でみられる水草

エビモ(南相馬市原町区深野)
【エビモ(蝦藻)】開花:5~9月
流水中で茎を長く伸ばして生育する。透明感のある葉にはフリルが付いているのが特徴。
小さな川や用水路の中で比較的よく見つかる水草。
【ミクリ(実栗)】 開花:7月ごろ 果実:8~9月ごろ
流水中では葉がテープ状に伸びる。大きくなると水中から硬い葉を直立させ、花を咲かせる。
実が「イガグリ」の形になる。

ミクリの花(南相馬市原町区上太田)

ミクリの沈水葉(南相馬市原町区下太田)
【コウホネ(河骨)】 開花:8月ごろ
スイレンの仲間で、黄色の花が咲く。水流が速い場所では沈水葉となり透明なワカメがたなびいているようにみえる。

コウホネの花(南相馬市原町区高)

コウホネが生育する水路
【バイカモ(梅花藻)】 開花:6月ごろ
葉が糸状に切れ込んで房状になっている。湧水の流れ込む、冷たい水の水路にみられる。

水路内で咲くバイカモの花(南相馬市原町区中太田)

バイカモが生育する水路(南相馬市原町区深野)
水草は小さな生態系をつくっている
このように水路の中にはさまざまな水草が生育しています。これら水草が生えている場所は水生昆虫やエビ・カニ、そして小さな魚のすみかにもなっており、小さな生態系として夏休みの観察にももってこいです。

ヒガシシマドジョウ

ホトケドジョウ

モクズガニ

スジエビ

コオニヤンマのヤゴ
身近な水路の中でくりひろげられる生き物たちのいとなみを、ぜひ探しに行ってみましょう。
(仲川邦広)

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更新日:2024年08月01日