南相馬市の春の植物をさがそう(+春の虫も少し)(令和5年4月1日)

更新日:2023年04月01日

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馬、甲冑姿の男の子、桜の木や花びらのイラストなどが並ぶ帯状の画像

(本記事は「広報みなみそうま」の令和5年3月号・4月号に掲載したコラム「おしえて博物館(43,44)」をインターネット公開用に再編集したものです)

今年4月から放送が始まるNHK連続テレビ小説「らんまん」の主人公は、明治から昭和にかけて活躍した植物学者・(まき)()(とみ)()(ろう)がモデルだそうです。牧野富太郎は数多くの新種植物を記載発表し、牧野日本植物図鑑に代表される図鑑を出版し、日本植物学の父と言われた人物で、これには植物学を専門とする学芸員としては注目せざるを得ません。というわけで、旬の話題に乗りつつ、今回のちょこっと☆みゅーじあむでは南相馬市内で春に観察できる植物(+昆虫も少し)を紹介いたします。

スミレの仲間

まず、牧野富太郎と聞いてすぐに連想するのは「マキノスミレ」です。牧野にちなんで名づけられた植物で、東日本に広く分布し、南相馬市でも野山を歩けばごく普通に見ることができます。スミレの仲間は種類が多く、市内に限っても19種類が確認されています。そのうち、春先の野山で簡単に見つけることができて、種類がわかりやすいものにはマキノスミレ、エイザンスミレ、ヒナスミレなどがあります。

マキノスミレの画像。紫色で花びらが五枚ついている。

「マキノスミレ」(4月上旬-下旬)

小さく可愛い。葉は幅が狭く先がとがる

エイザンスミレ。花びらは白く、ほんのり紫色を帯びている。

エイザンスミレ(4月中旬)

山地の林道などでよく見かける。深く切れ込んだ葉が特徴的で格好いい

山地の木に咲く花

山地の落葉樹林の中で早春に咲くのは「オオバマンサク」です。見た目はやや地味な花ですが、まだ木の芽吹きもない、明るい林の中で早々に春を感じさせてくれます。

また、3月の末ごろ、市内の渓谷地帯に咲くツツジの仲間が「アカヤシオ」です。本種は本州太平洋側の深山に分布が広がり、その南端が近畿地方、北端が福島県浜通りの相馬地方となっています。福島県内では浜通りにしか分布しないため、浜通りを代表する花といってもよいかもしれません。県立自然公園の夏井川渓谷(いわき市)などでは春山ハイキングの名所を飾る代表格となっています。一方で、南相馬市内では、新田川渓谷や橲原(じさばら)渓谷などの渓谷地帯に群落があります。これらの生育地に近づくのは容易ではありませんが、大きな花が春の谷風に揺れるようすはたいへん(おもむき)深いものです。分布域の北限であることなどを考えると市天然記念物級ですので、生育地を壊さぬよう大切に見守りたい植物です。

オオバマンサク

オオバマンサク(3月上旬)

細く短い黄色の花弁が特徴的

アカヤシオ

アカヤシオ(3月末-4月上旬)

南相馬市では渓谷地帯を彩る

「春の妖精」

植物の中には、春の短い期間のうちに、開花だけでなく結実・光合成を済ませ、夏ごろには地表から姿を消して翌年の春まで休眠するという変わった性質のものがあります。英語でスプリング・エフェメラル(直訳すると「春の(はかな)いもの」)、日本語では「春の妖精」と呼ばれます。その中で、市内で観察できる「春の妖精」をふたつだけ紹介します。

ひとつは「カタクリ」。「春の妖精」の代表格で、模様の入った葉を落ち葉の上に広げ、その上にピンクや紫色の可憐で美しい花を咲かせます。花の寿命は数日と短く、見ごろをとらえるのが難しい、まさに「妖精」の名にふさわしい植物です。南相馬市内では山地の明るい雑木林で多くみられますが、原町区牛越の丘陵地などのやや市街地寄りのところでも見つかります。

「キクザキイチゲ」はカタクリと同じような場所でみられ、園芸植物で有名な「アネモネ」の仲間です。本種は、根が横に()って広がるため、しばしば群落をつくります。陽だまりの中に咲く花を観察していると、花の中心が暖かいのか、花粉を求めて小さな虫が集まっているようすもみられます。

カタクリの花の画像。紫色の花。

カタクリ (3月下旬-4月上旬)

「春の妖精」1。見ごろがあっという間に過ぎ去る、まさに妖精

キクザキイチゲ の画像。白い花で花びらが12枚ある。

キクザキイチゲ (3月下旬-4月上旬)

「春の妖精」2。陽だまりの中に出現した群落を見つけるとしばし時を忘れてしまうことも

昆虫にもある「春の妖精」

ビロードツリアブの画像。体全体が茶色の毛で覆われたアブ。

ビロードツリアブ(4月)

もふもふした愛らしいアブ

昆虫にも同じ呼び名をもつものがあります。そのひとつが「アブ」の仲間の「ビロードツリアブ」。アブといっても花の蜜を吸って生活する無害な昆虫で、そのうえ、全身がモフモフの毛で覆われた愛らしい姿をしています。博物館のある東ヶ丘公園の周りでも普通に見ることができます。

ウスバアゲハの標本の画像。羽が透明で透けている。

ウスバアゲハ(5月)

ガラス細工のような質感のチョウ

もうひとつがチョウの仲間の「ウスバアゲハ」。(はね)の表面に鱗粉が少なく、向こう側が透けて見えるという変わったチョウです。実は私はこのチョウを野外で見たことがなく、あこがれの存在で、今年はぜひ見たい種類のひとつです。

外は春爛漫(はるらんまん)の季節。みなさんも「春の妖精」を探しに野山を歩いてみてはいかがでしょうか。

今月から当館のミニテーマコーナーでは、これらの植物を紹介します。ぜひご来館ください。

(仲川 邦広)

馬、甲冑姿の男の子、桜の木や花びらのイラストなどが並ぶ帯状の画像

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