寄生植物「ヤドリギ」を探そう!(令和4年2月1日)

更新日:2024年04月01日

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馬、甲冑姿の男の子、節分の豆、赤鬼、青鬼、梅の花などが並ぶ帯状の画像

昨年のこと、東ヶ丘公園の中で「ヤドリギ」を見つけました。山のほうでヤドリギが見られる場所は知っていましたが、市街地に近く、博物館からもすぐのところにあったので驚きました。

今回は、冬の時期に観察しやすい、ちょっと不思議な植物のひとつとしてヤドリギをご紹介します。

南相馬市のヤドリギ

東ヶ丘公園のヤドリギ

【写真1】南相馬市原町区 東ヶ丘公園のヤドリギ

まずヤドリギとはどのような植物かというと、写真1のように樹木の枝の途中に緑色のボール状のかたまりとなっているのが一目で分かる特徴です。ヤドリギはビャクダン科ヤドリギ属の常緑樹で、自分の根を持たず、コナラやケヤキのようなさまざまな落葉広葉樹に「寄生」し、水分や養分を奪って生育します(寄生される側を「()(しゅ)」といいます)。ヤドリギは常緑樹であるため、寄主である落葉広葉樹の葉が落ちて見通しが良くなる冬の時期が観察に適したシーズンとなります。

つぎにヤドリギはどこから来て、どのように寄主となる樹木へ寄生するのでしょうか。

ヤドリギの雌花

【写真2】ヤドリギの雌花

ヤドリギの雄花

ヤドリギの雄花

ヤドリギは寄生植物といってもれっきとした被子植物です。花も咲かせるし、実(種子)もつけます(写真2、3)。この実には果肉があり、それを食べるためにやってくる野鳥が種子の運び手となるというわけです。種子が発芽して生育するまでの流れは以下のようなものです。

ヤドリギの仲間のタネ。木の幹の表面にへばりついている

【写真3】ヤドリギの仲間のタネ。木の幹の表面にへばりついている

①鳥に食べられて運ばれてきた種子が排泄され、寄主となる樹木の枝に付着して発芽する。

②発芽したヤドリギは寄生根(寄生するための特殊な根)を伸ばし、枝に刺して寄主の組織に侵入する(写真4)。

③ヤドリギの寄生根と寄主の()(かん)(そく)がつながることで、寄主から水分と栄養を奪って生育する(写真5)。

発芽後に寄主の樹幹に侵入するヤドリギ

【写真4】発芽後に寄主の樹幹に侵入するヤドリギ

ヤドリギの芽が木の幹から出ているようす

【写真5】ヤドリギの芽が木の幹から出ているようす(写真:平宗雄氏提供)

ヤドリギが寄生するのは大木や老木というイメージがありますが、私が観察した範囲では樹齢20年くらいの比較的若いケヤキでもヤドリギが寄生していることがありました。ある程度の大きさがあって、種子を運んでくれる野鳥が飛来しやすい木であれば、大木である必要はないようです。

南相馬市内のヤドリギの分布情報はとても少ないのですが、おおよそ山地から低地にかけてまばらに分布しているようです。たとえば、先に紹介した原町区の東ヶ丘公園のほか、大原街道沿い、鹿島区では梵天大滝付近で見つかっています。ほかの場所でも見つかると思いますので、みなさんもこの不思議な植物・ヤドリギをぜひ探してみてください。そして、もし見つけたら博物館へお知らせくださいね。

ヤドリギと間違いやすいものに、「(てん)()()病」という菌類等によって引き起こされる病気があります。植物ホルモンの異常によって部分的に枝が多数発達するものです。サクラの樹で多くみられるため、サクラでこのような現象を見かけたらまず天狗巣病だと思ってよいでしょう。

余談:私が見た外国のヤドリギ

地元の話からはそれますが、私が見た外国のヤドリギの話を少しだけ紹介します。

ヤドリギは日本だけでなく世界中にその仲間が分布しています。日本に一般的に生育するヤドリギと同じ仲間(Viscum属)は、ヨーロッパから東アジア、アフリカ、オーストラリアにかけてさまざまな種が分布します。一方で、北アメリカ大陸には同じビャクダン科のアメリカヤドリギの仲間(Phoradendron属)などが一般的です。

ヤドリギの巨大な球体。メキシコ南部にて(Nacaltepec, Oaxaca, MEXICO)

ヤドリギの巨大な球体。メキシコ南部にて(Nacaltepec, Oaxaca, MEXICO)

上の写真は私が学生の時に出会った巨大なアメリカヤドリギの仲間です(Phoradendron forestierae と思われる)。メキシコ南部の柱サボテンと広葉樹林が入り混じる植生帯で植物を探して歩いていた時に撮影したもので、球状のかたまりの直径が1.5m以上はあったように思います。それが日本で見慣れたヤドリギの仲間であることは一目でわかりましたが、その存在感には圧倒されました。

「こんなところにもヤドリギがいるのか」

そう思いながら、自分が住む日本と遠く離れた異国の地が、植物の進化や分布拡大の長いながい歴史のなかでつながっているのだと、小さな感動を覚えたできごとでした。

(仲川 邦広)

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