秋の野馬追祭場に行ってみよう ~花でにぎわう雲雀ヶ原~(平成30年10月1日)

10月になり、肌寒い季節となってきました。
南相馬市博物館のある東ヶ丘公園は雲雀ヶ原祭場地(ひばりがはらさいじょうち)に隣接しています。ここ雲雀ヶ原祭場地では相馬野馬追の神旗争奪戦などが行われます。毎年7月頃には野馬追の期間中やその準備のために雲雀ヶ原はとてもにぎやかになります。 一方で、野馬追が終わってしまうと訪れる人は地元のお散歩をする方くらいで、少々さびしくなってしまうようにも思われます。
しかし、見方を変えるとこの場所が実はとてもにぎやかな場所だということに気が付きます。
それは「原っぱ」に咲く野の花のにぎわいです。
今回はそんな花たちを紹介しましょう。

ツリガネニンジン

ワレモコウ
雲雀ヶ原では初夏の頃にはすでにススキなどが伸びはじめ、夏の花が咲いてきますが、野馬追の直前に一度草刈りが行われるため、真夏はあまり植物が観察できません。しかし、野馬追が終わって秋にさしかかってくる頃には徐々に草丈が伸びてきて、ふたたびさまざまな花をみることができるようになります。
淡い青紫のベル型の花をつけるツリガネニンジン、赤くて丸い花が特徴的なワレモコウ、クリーム色の細かな花がいっせいに咲くアキカラマツ、ところどころに鮮やかな紫色の花をつけるナンテンハギ…。

アキカラマツの花を訪れる花バチ

ナンテンハギ
昔の雲雀ヶ原には原っぱが広がっていました。
「原町」「原ノ町」という地名からしてもお分かりのように、野馬追が行われている原町の市街地は長い間草原が広がっていました。草原といっても牧草地のような人工的な環境ではなく、生えているのはススキなどの野生の植物です。
このような草原には多くの野の花が生育しています。雲雀ヶ原の草原は市街地からすぐの場所でさまざまな花が見られるとても貴重な存在です。
また、草原には昆虫たちも集まってきます。少しの間観察しているといろいろな虫が見つかり、目を楽しませてくれます。

イタドリ

ベニシジミ、幼虫はイタドリなどを食草にする
天気がいい日には雲雀ヶ原の景色と草原の花を眺めながらぼんやりと過ごすのがおすすめです。
私は仕事に疲れた時はときどきお弁当を持ってこの草原の野の花を見ながらお昼ご飯を食べるようにしています。その昔、花いっぱいの草原の中で野馬追の馬たちが生活するのを、当時の人たちも同じ場所から眺めていたのかもしれない…、そう思うと少しだけ元気がわいてくる気がします。

花粉を集めるハナムグリ


ハイメドハギ
このように魅力的で愛らしい生き物たちにとって大切な場所である草原ですが、実はその状況はあまり楽観的ではありません。
日本には昔は広大な面積の草原や草地が存在しましたが、近年は産業の中で草原自体が利用されなくなり、開発や管理放棄などによってその面積は大きく減少してしまいました。秋になると日本の風物詩としてあげられる「秋の七草」はどれも草原の植物ですが、今ではそれらの花の生育地はとても少なくなっています。こうした草原環境を好む植物の多くは絶滅が危惧される植物として環境省や自治体が公表するレッドリストに掲載されるようになっています。 雲雀ヶ原でも現在のこっている草原性植物たちの生育する面積は過去の様子と比べればほんの少しだけです。そしてこの場所にも絶滅の恐れがある草原性の絶滅危惧植物が生育しています。
詳細については今のところ公表できませんが(下記、「注意」をご覧ください)、将来的には地域の財産としてご紹介できるようにしていきたいと考えています。
(注意:絶滅が危惧される生物の生育・生息地を公表することは、場合によっては状況を悪化させる場合があるため慎重な対応が必要です。)
(仲川 邦広)

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更新日:2024年04月01日