“ベンケイ"ってなぁに? (平成27年4月1日)

「ベンケイ」レシピ
材料(鍋一つ分)

- 大根 1本
- 油 大さじ2
- 芋がら 15.5グラム(5~6本)
- 酢 大さじ8
- 醤油 大さじ6
- 砂糖 大さじ4と1/2
- 赤唐辛子 1~2本
作り方
- 大根は2~4ミリのいちょう切り、芋がらはお湯で洗って10~15ミリに切る。大根を油で炒め、油が大根に回ったら酢を大さじ1、2杯入れてから柔らかくなるのを防ぐ。
- 芋がらを加え、残りの調味料を入れて炒める。赤唐辛子を割り入れ約10分ほど味を調整しながら炒り煮する。冷まして味を馴染ませれば完成。
(注意)分量はお好みで。上記はレシピ用に計量しましたが通常は目分量で作ります。


最近はその地元だけのものではなく、日本全国に市民権を得た郷土料理は少なくありません。ゴーヤチャンプルー、チキン南蛮、ずんだ餅、讃岐うどん・・・数えてみるときりがありません。そんな中“ベンケイ”と聞いても「はてな?」となるばかりですね。実は食べ物の名前で、とってもローカルなんです。
ベンケイは南相馬市原町区の萱浜地区(特に北萱浜)に伝わる郷土料理で、昔はお正月用の保存食とされ、時にはお寺に集まった時に供された料理でした。お正月前に一斗甕にひとつ分作り置きして1ヶ月は食べたといいますが、現在では季節の味として親しまれており、各家庭ごとに味が違います。作りたてよりも冷たくなったものの方がさらに美味しく、再加熱は厳禁で、日にちが経つほど美味しくなると言われています。
江戸時代末期、南相馬市が属していた奥州中村藩は天明の飢饉で大打撃を受けて人口が激減しました。その時ピンチを救った政策の一つが移民の誘致です。ベンケイはその際、主に北陸地方から北萱浜へ入植した移民によって伝えられた料理であると考えられます。
“ベンケイ”という名前の由来は諸説ありますが、移民の故郷の一つである富山県砺波地方の方言「ベンケ=大根おろし」、「ベンケオロシ=唐辛子を入れた大根おろし」も由来の一つであると考えられます。(現在、砺波地方でこれらの方言はほとんど使用されていないそうですが)名前もそうですが、料理自体が共通すると考えられる郷土料理が砺波地方にもあります。
原町区の沿岸部に位置する萱浜地区は東日本大震災による津波の被害が大きく、その大部分が災害危険区域に指定されており、人々が居住することが出来ません。更なる原発事故が、自家製の野菜で作るベンケイを難しくしています。
郷土料理は、その地の風土やそこに住む人々の営みによって長い時間をかけて生まれる大切な文化で、その土地でそこに住む人々に育てられた、あるいは、自然の恵みによってもたらされた材料を使って作られるべきではないでしょうか。私たちのそういう自然の生活は損なわれ、不自然な環境の中に身をおかれているのが現状です。その不自然さは麻痺し、“普通”になりつつある気がします。
当たり前が当たり前でなくなり、不自然さが普通の生活を支配し始めている“今”、それでもやはり私たちはベンケイの味を伝え続けていかなくてはなりません。
(川崎 悠)

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更新日:2024年04月01日