和物(わもの)にみる小動物の吉祥文様(きっしょうもんよう)(令和5年2月1日)

今年は卯年なので、ウサギの置物やイラストが目につきますね。
日本の伝統的な祭りの道具や衣装、社寺建築の彫刻といった和物には、それにふさわしい由緒や故事を図案化した文様が描かれています。中国の伝説に登場する龍や鳳凰などの神獣はその代表的なものですが、人間の身近にいる小動物も信仰的な意味合いから図案化されたものが多くあります。

「波と兎」
南相馬市原町区萱浜
北萱浜の神楽幕
相馬地方で多く見られる民俗芸能に「神楽」があります。神楽幕には地域によってさまざまな文様がありますが、南相馬市原町区北萱浜の神楽幕には「波と兎」が描かれています。波は水を表し火防・火除けの守りとされ、ウサギは月の精といわれ、子孫繁栄や豊穣など慶事をもたらすめでたい動物とされています。この「波と兎」は、蔵の鏝絵(左官職人が漆喰で作ったレリーフ)や陶磁器・着物などにもよく見られる組み合わせです。

「葡萄と栗鼠」
南相馬市小高区岡田
初発神社の彫刻
一方、神社建築にもさまざまな動植物の彫刻がみられます。
南相馬市小高区岡田の初発神社社殿にはいくつもの彫刻が施されていますが、その一つに「葡萄と栗鼠」があります。リスは多産なネズミに似ていることから、子孫繁栄を象徴する縁起の良い動物とされています。ブドウはたわわに実がなることから多産・豊穣・長寿などを意味し、リスとともに描かれることが多い意匠です。このような、めでたい兆しを表す文様を吉祥文様といいます。また、ブドウは「武道」、リスは「律する」に通じるため武士に好まれたともいわれています。
身の回りにある和物の文様や装飾の意味を調べてみると、興味深い発見があるかもしれませんね。
(二本松 文雄)
(お知らせ)
博物館では3月31日(金曜日)までミニテーマコーナーで「博物館でみるウサギ」を展示中です。

- この記事に関するお問い合わせ先
- このページに関するアンケート
-
より良いウェブサイトにするために、このページのご感想をお聞かせください。
更新日:2024年04月01日