公園内の小さな建築家たちー身近な虫こぶのはなしー(平成28年8月1日)

今回は博物館の周りで見られる生き物たちのお話です。
南相馬市博物館は県が管理する東ヶ丘公園(あずまがおかこうえん)の中にあります。
博物館のまわりではたくさんの生き物を見ることができますが、その中には毎日公園をお散歩している人でさえ、ほとんど気付いていない生き物もいるはずです。
ヤマザクラ・フジ・エゴノキ・イタヤカエデ・ケヤキ・ヘクソカズラ・クリ・・・・・・
花や紅葉がよく目について公園の中のどこでも見られる植物たちですが、よく見るとこれらのあちこちに小さな生き物が生活しているのを見つけることができます。それは「虫こぶ」です。植物の表面に住み着く虫たちがつくる家であり、エサでもある、不思議な構造物です。
(注意)「虫こぶ」については以前「なんだこれ?――フワフワな物体、市内にあらわる。(平成27年4月1日)」でもご紹介しましたので、そちらもチェックしてみてください。
以前ご紹介した虫こぶは比較的海の近くで見られましたが、公園の林の中でもたくさんの虫こぶを見つけることができます。
ヤマザクラには「サクラハトサカフシ」(サクラフシアブラムシ)


フジにはフジハフクレフシ(タマバエの仲間)


エゴノキにはエゴノネコアシ(エゴノネコアシアブラムシ)


イタヤカエデにはイタヤカエデハツノフシ(フシダニの仲間)


ケヤキにはケヤキハフクロフシ(ケヤキヒトスジワタムシ)


ヘクソカズラにはヘクソカズラツボミマルフシ(ハリオタマバエの仲間)


クリにはクリメコブズイフシ(クリタマバチ)


あれも虫こぶ、これも虫こぶ・・・・・・、探し始めると次々と見つかります。
見つかるたびに「こんな虫こぶがあったのか」と毎回驚かされます。
最初は奇妙な形で不気味にも感じましたが、見慣れてくるとその形が本当にさまざまでとても面白くなってきます。
赤い長ふうせんのような形、ピンクのひょうたんのような形、他にも、平たいボタン、バナナの房(ふさ)、青いミカン、つまようじの先端、赤いボール、それに「わたあめ」のような形・・・・・・本当にさまざまです。
こんなにも多彩な虫こぶを作る虫たちですが、その反面に面白いのは、中に住む主人である彼らがとても地味な姿をしているということです。アブラムシの仲間など、図鑑で見ても他の種類と見分けることは私にはとてもできないように思います。
他のアブラムシやタマバエなどと見分けることができなくても、彼らの作った虫こぶなら簡単に種類を見分けることができます。
人に例えるなら、顔がそっくりで見分けのつかない建築家さんがいて、普段はまったく同一人物のようなふりをしているのに、いざ彼らの作った建物を見ると、材料やデザインが全く異なるので初めて別人だとわかるようなものです。
「見かけじゃないんだ、作ったもので評価してくれ」という主張が聞こえるようです。芸術家のようにも思えますね。
普段は気が付かない虫こぶですが、それらをよーく観察してみると、小さな虫の種類のひとつひとつの存在をはっきりと感じることができます。見ためはパッとしませんが、植物を使って多彩な形を作ってしまう小さな建築家たちに脱帽です。
(仲川 邦広)

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更新日:2024年04月01日