市長への手紙「小高病院の入院機能再開等について」

更新日:2019年04月01日

(男性)

私は市立病院で外科の医師をしています。
先日この市長への手紙というシステムを知り、大変素晴らしい取り組みであると感じました。
一方で以前より、南相馬市の医療政策に関して一抹の不安を抱えておりますが、医師としてコメントしても中々回答を得られないことから、今回は医師としてはではなく医療知識がある個人として意見を述べさせて頂きます。

1点目は小高病院の入院機能再開に関してです。
現・門馬市長の選挙公約でしたので、小高病院に入院機能再開について一定の市民からのニーズはあると思われますが、約3000人しか居住していない小高区に入院施設が本当に必要か、と言うことに関しては踏み込んだ客観的な議論が必要です。
医療全体を見た時に、医療資源・財源は有限ですので、ある程度自由競争は必要ですが、高齢者が増え、患者の単価も上がり、医療費増大に歯止めがかからない中で、医療機関は集約することが現在の国の方針であると思います。
しかし、小高病院の入院機能再開はその方向に逆行するものです。
加えて、小高に入院機能再開のため医療施設を新規に建設することは、医療の持続可能性を考えた際に、財政的にいかがなものでしょうか。
現状、市立総合病院が10億程度の赤字を計上しており、今後も赤字の状況は続くと思われますが5万人規模の南相馬市が2つの医療機関の赤字を補填し続けることが可能でしょうか。
現実に公的病院で立ち行かなくなり、閉鎖した病院が一つでないことはご存知の通りです。

もう一つの議論は、入院機能再開に際し、医療法16条では1人でも入院患者がいれば、特別な事情があり都道府県知事の認可がない限り、当直医を設けなければならないことが規定されています。
例えば常勤医が1人確保できたとして、どのように当直医を確保するのかが疑問です。
現在市立総合病院にも当直医の応援を頼んでいる状況ですので総合病院からの人的援助はあっても限定的になると考えます。
一体どのように確保する予定なのでしょうか。
もし外部から確保するとすれば費用はさらに高騰します。

まとめますと、小高病院に入院機能を持たせる場合、その建設、維持に多くの人的・金銭的コストが発生しますが、その具体的な(資源・金銭面の)構想およびそれが持続可能なものなのかを御教授頂きたいです。

2点目は市立総合病院の増床に関してです。
当院の院長から小高病院から70床を移転し、市立総合病院が230床から300床になると伺いました。
ご存知のことと思いますが、現在当院の稼働率は55-70%であり、入院患者は150人前後の状況が震災後ずっとつづいています。
震災後病床数は病棟の再開等で増えていますが、入院患者数はほとんど変動していません。
この状況に鑑みると、今後も入院患者は楽観的に考えても150人前後の状況が続くと思われます。
一般的には病院の経営状況を改善するためには病床稼働率を上げねばなりません。
つまり、現在の医療ニーズを考えた場合には市立病院を持続可能なものとするべく経営状態を好転するためには、病床数の縮小を求められる状況です。
その中であえて、病床の増床を行う予定であることの理由をご教示ください。
蛇足ですが、現在医療の質の向上と医療の標準化のため、急性期医療機関は現在DPC(包括医療費支払い制度)にすることが求められています。
しかし、当院では一般病床の一部で不適切な利用方法(療養型病院のような使用法)があるため、DPCにすると大幅な赤字になることが予想されます。
この使用法を改めた場合、入院患者数はさらに低下すると思われます。
しかし、経営の最適化を考慮すればDPCへの変更、病床の縮小は待った無しです。ご意見をお聞かせください。

3点目は当院の消化器内科の標榜に関してです。
ご存知の通り、当院には2018年4月から消化器内科の常勤医が不在です。
外科が入院機能を補填し、非常勤医師で外来・内視鏡業務を行なっている現状です。
この件に関して、医局会では散々、現状を市民に周知するべきだとコメントを求めてきましたが、院長に陳情しても、市長がそれを望まないからという理由で退けられています。
実際、消化器内科の常勤医はいませんが、非常勤医師が増えたため、内視鏡件数は昨年度よりも増えていると思われ、現在の状況は悪いことばかりではありません。
ただ、現在の市立病院のHPでは、正しい情報の公開がなされていません。
現状を周知した上で、市民に医療を提供するべきであると考えております。
ご再考を下さい。

4点目としては、手術室の大規模改修に関してです。
ご存知かと思いますが、震災後当院の手術室は天井の水漏れが続いており、幾度となく修理を繰り返しております。
病院設備設計ガイドラインで示された清浄度に関しては満たされている聞いていますが、おそらく手術室の天井裏はカビだらけになっていることが予想されます。
市長はそのような手術室で自身の手術を受けたいとお思いですか?
私なら、私自身も私の家族もそのような手術室では手術されたいとは思いません。
手術室からも何度か改修の予算申請がなされていると伺っていますが、中々進まないと聞いています。
完全に壊れてしまった場合、突然市民の手術ができなくなってしまいます。
そうすれば市民への影響は計り知れません。
一刻も早く、待機的に手術室の改修をご検討ください。

上記に関して、何度か院長に対してや医局等の会議の場において質問を行い、回答を求めておりますが、納得のいく回答を頂いておりません。
ご回答のご検討の程、宜しくお願い致します。

回答

「小高病院の入院機能再開」につきましては、改革プラン策定委員会を設置し、協議検討いただいた結果、当面は無床のサテライト診療所とし、医師・看護師等の確保、財政負担の明確化などの課題を解決した上で入院機能の再開を目指すとの方針が示されたところです。
現在、市民説明会・パブリックコメントを実施しており、広く市民の皆様のご意見をお聞きしながら、持続可能性の観点も踏まえ、取りまとめていくこととしております。
また、医療法16条での医師配置義務についてですが、これは病院であった場合であり、診療所(有床診療所含む)には適用されませんが、必要と考えられる医師の人数が揃わないうちに入院機能を再開させるようなことは考えておりません。

「市立総合病院の増床」につきましては、同委員会でも議論されたところでありますが、南相馬市の人口動態では、人口そのものは減少していくものの高齢者は増加していく傾向であると推計されております。
また、患者動向に目を向けると、精神病棟を除く相双医療圏からの流出患者は35.8%もおり、その主な疾患としては悪性新生物・内分泌・栄養及び代謝疾患、筋骨格系及び結合組織の疾患、肺炎、神経系の疾患と続いております。
今回の増床はこのような状況を解決し、地域完結での医療体制の強化を目指すものであります。
必要とされる病床数や病床機能を推し量ったところ、300床を目標に整備するという方針が示されたところではあり、これについても、上記同様に今後取りまとめた後、県等との協議を経た上で、最終的な病床数が決定されることとなります。
また、該当診療科医師の増員も必要と考えておりますし、将来的にはDPCの導入も視野に入れ進めていくものでもあります。
なお、現改革プランでは総合病院は329床となっており、必要とされる病床数や病床機能を整備し、大規模な増改築に至らないよう考慮した結果が300床という目標でもあります。
現改革プランと比較すると29床の減床となるものです。

「当院の消化器内科の標榜に関して」につきましては、ご指摘のとおり消化器内科の常勤医師が平成30年3月に退職し、同年4月からからは常勤医師が不在のため、入院については当院の外科が、外来においては非常勤医師の協力を得て診療を行っているところです。
消化器内科の常勤医師をはじめとした当院の医師数の減については、福島県立医科大学や県内外の医療機関の協力を得ながら非常勤医師の配置と、院内関係科の常勤医師により対応しているところではありますが、特定の診療科(消化器科、小児科、泌尿器科、耳鼻咽喉科等)につきましては引き続き、常勤医師の確保に努めて参ります。
なお、常勤医師が不在となっている消化器科の診療体制については、院内掲示により、外科医師が中心となって診療を行っている旨を患者様に周知しておりますが、ご指摘も踏まえ、改めて患者様に誤解を与えないよう丁寧な周知を行い、消化器科の診療体制についてご理解とご協力をお願いしたいと考えております。

「市立総合病院本館手術室の水漏れ」につきましては、手術室の真上のバルコニーの防水シート張替工事や壁面の防水工事など、大規模な防水改修工事を平成26年度と平成27年度に実施し、雨漏りはほとんど改善されました。
しかし、手術ホール入口付近の雨漏りは完全には改善されなかったため、水が漏れてくる部分に専用の受け皿を設置するなどし、水流出の対策をしているところです。
また、2月4日の朝に判明した手術室3の前室天井からの水漏れについては、天井裏に設置してある温水コイルの故障による水漏れが原因のため、安全が確認できるまで手術室3を閉鎖した上で、温水コイルを機械室に新設することを含め業務を進めております。
なお、原因究明のため天井を打ち抜いて確認したところ、天井裏にカビなどは発生しておりませんでしたが、手術室の閉鎖を解除する際には、専門業者による環境測定を実施し、浮遊及び付着細菌検査の良好な結果を確認した上で解除する考えです。
さらに、病床再編方針決定後に本館の大規模改修を進めていく予定でおりますので、抜本的解決のために、大規模改修範囲の中に手術室の改修も含めることで計画しております。

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